最近、あまり追っていないのですが、直感的に思っていることを書き残しておきます。ただ、私の読みはあまり当たりません。

 

 右派は、現時点ではサルコジ前大統領とジュペ元首相との間で候補者争いをしています。フィヨン元首相も名乗りを上げていますが、現時点では力が弱いです。トランプ的マッチョの要素を持つサルコジ元大統領と、かつてはテクノクラート臭さがあったものの最近は円熟味を増したジュペ元首相、さてどちらが選ばれるかですが、それぞれに弱点があるように思います。

 

 サルコジは右側に手を伸ばそうとすると、そこには極右国民戦線のマリーヌ・ル・ペンが居ます。政治的な立ち位置としてちょっと窮屈感があります。あまり過激な事を言うと、国民戦線と同一視されてしまいます。かと言って、今回は中道側に手を伸ばそうとするとジュペ元首相が居ます。逆に、ジュペ元首相は、20年以上前に首相を務めていることからさすがに古株感を醸し出しており、年齢的にも71歳というのは弱点でしょう。ただ、私は現時点ではジュペ元首相の方に若干の分があるように見えます。

 

 与党左派ですが、オランド大統領が2期目を目指すのかについてはフランス国内でも疑問視する声が強いです。国内的には、批判されているというよりも、既にバカにされている感があります。むしろ、今のヴァルス首相の方が良いのではないかという声が強いです。正直、オランド大統領ではマリーヌ・ル・ペンに第一回選挙で排除されてしまう可能性が極めて高いです。ヴァルス首相だったら大丈夫かと聞かれると自信はありませんが、若くて、エネルギーに満ち溢れ、かつ右派にも食い込める(党内最右派です)という事でより、オランド大統領よりは可能性が上がってきます。

 

 さて、国民戦線ですが、マリーヌ・ル・ペンが出てくるでしょう。フランス大統領選挙では、第一回投票では20%弱取れれば決選投票に行けますので、かなり可能性が高いです。2002年の大統領選挙では、第一回投票でシラク大統領と(父の)ジャン・マリー・ル・ペンが上位2位となりましたが、その再来があるのではないかと見られています。マリーヌ・ル・ペン的に最もやりやすい相手はサルコジです。仮に決選投票にサルコジとマリーヌ・ル・ペンが残る時、左派の支持者は、マリーヌ・ル・ペンを排除するためであってもサルコジには票を入れたくないと思うでしょう。一方、中道色のするジュペであれば「まあ、仕方ないか」という気になるはずです。

 

 さて、国民戦線の票の出方ですが、第一回投票で20%前後を叩き出す力が付いてきているように思います。2002年の時は、第一回投票と決選投票でジャン・マリー・ルペンが取った票は殆ど差がありませんでした。全く伸びなかったという事です。そういうトレンドは、昨年末の地方議会選挙でも同じでした。第一回投票で40%近く取った地方でも、結局、決選投票で全く伸びず、過半数まで行きませんでした。つまり、国民戦線に票を投じない人は、何があろうと(例:自分の支持している候補が第一回投票で落選した後の決選投票)票を投じないという事でした。

 

 簡単に纏めると、①国民戦線の地力は確実に上がっている、②ただ、決選投票において第一回投票からの上積みがない、これが「これまでの選挙」の中で明らかになっていると思います。さて、この②の状況が来年の大統領選挙でも続くのか、それとも、第一回投票では別の候補に投じたけど、決選投票ではマリーヌ・ル・ペンに入れようとするフランス国民がどの程度出てくるのか、という事が最も重要なテーマになります。

 

 私は「ある程度」そういう国民が出てきているように思います。決選投票で30%くらいまで行けるんじゃないかなと思っています。仮にサルコジが相手であれば、左派が棄権に回る可能性が高まるため、相対的にマリーヌ・ルペンの得票率が上がるという事もありうるかなと思っています。同じく、左派(オランド or ヴァルス)が残る時は、現時点で右派の中には「左派には投票しない」という強い意見もありますが、特に党内最右派のヴァルスである場合は、なんだかんだで右派支持者はヴァルスに投票する向きが強くなると思います。一番纏まりが良さそうに見えるのはジュペ元首相でして、決選投票で広く票を集めそうな感じがします。ジュペ元首相が勝つなら、その後の政権は左派の一部を取り込んだ連立になりそうな気がします。

 

 いずれにせよ、現時点でフランス大統領選挙でマリーヌ・ル・ペンが勝ち上がる可能性は現時点ではまずあり得ません。ただ、決選投票に上がってくる事は大いにあり得ると思います。2002年の時にジャン・マリー・ルペンが決選投票に残った時は「seisme politique(政治的激震)」と言われましたが、段々「(国民戦線の伸長に対する)慣れ」が出てくるのかなという感じがしています。この「慣れ」が怖いと思います。

 

 さて、これがどの程度国際政治に影響するかですが、あれこれ書いた割には大した結論になりませんが「誰が勝とうと大転換は無いだろう。」というふうに思います。