【以下はFBに書いたものを加筆して転記しています。】


 日本のオリンピック開催等を契機に、これからスポーツ振興が盛んになってくると思います。2020年に向けて活躍を期待するばかりです。


 いつも思うのがイギリスの躍進です。かつて、アトランタでイギリスは金メダル1でした。当時、私はフランスに居て、フランス人が「あいつら、スポーツがダメなんだ。」とバカにしていたのを思い出します。しかし、その後イギリスは復興します。最終的にロンドン・オリンピックでは29の金メダルを取りました。イギリスの経験に学ぶところは多いのかなと思います(自転車、馬術、ボート辺りが多いのはイギリスっぽいですね。)。


 日本のスポーツ界を見ていて、ちょっと気になるのが「内向き」なことです。例えば、オリンピックにおける日本代表団でとても特徴的なのは「お付きが多過ぎ」ということです。代表団の半分くらいは選手ではありません。いわゆる各競技団体の「役員」みたいな人が半分くらいを占めます。


 その割には、各競技の国際団体に人が出せていません。私がやっている柔道は、国際柔道連盟(IJF)に理事を出せていません。私は日本の柔道というのは、とても良い伝統があり(当たり前ですけど)、しかもルール等についても良い積み上げを持っていると思います。あの日本の「柔道」をもっと広めて、国際的にもルール設定等でも主導権を握るべきだと信じて疑いません。


 その一方で、IJFで出来てくるルールを見ていると、どう見ても「いいようにやられている」と思うことが少なくありません。審判のレベルも、(少し古いですが)篠原のダヴィド・ドゥイエに対する内股すかしを取れないような審判が横行するようではダメですし、ロンドンの海老沼選手の試合に対するジュリーの判断をめぐるゴタゴタも、制度設計が上手く行っていないことを窺わせました。最近、柔道については徐々に「真っ当な」方向に変わってきてはいますが、それが日本主導のようにも思えません。


 あまり陰謀論を取りたくはありませんが、日本は昔からそういうルール作りで苦労してきました。鈴木大地さんがバサロ・スタートで金メダルを取ったら、バサロ・スタートが禁じられ、ノルディック複合で日本が活躍したら、(日本が得意とする)ジャンプの比率を下げられたとか、因果関係はよく知りませんけども、陰謀論の一つも言いたくなるような現象が過去にはありました。


 日本のスポーツ界の足腰を強化する観点から、各競技団体の国際団体に対してアプローチを強化し、ルール策定を含む競技全体の世界的な運営に関与することをやるべきです。そのためには、「過去にその競技で活躍した方」だけが国内団体で幅を利かせることではダメです。「競技者としてはトップクラスではなかったかもしれないけど、きちんと国際的な舞台で日本の立場を公用語で説明できる人」が入っていくことが大事です。


 そのためには、英語が出来る人を意識的に育成しなくてはいけません。柔道で言えば、袖の持ち方一つ取っても、微妙なところをきちんと英語でプレゼンできるようなところまで行く必要があります。そして、そういう人を国際団体に理事クラスで押し込んでいくためのロビーイングをやることも国策としてやるべきだと思います。そこで在外公館(大使)を使ってもいいでしょう。


 韓国はそういうのが得意ですね。ちょっと話題はずれますが、先般、オリンピックの競技見直しの議論で、日本ではレスリングが外されるのではないかと戦々恐々でしたが、普通に考えればテコンドーが対象になってもおかしくないところです。しかし、そもそも俎上にすら上がりませんでした。あれはそういう議論があることを察知した段階で、あちこちにロビーイングをしたことを窺わせます。アンテナが高いし、行動に移していくのも早いです。


 どの競技でも、国際的に活躍できる人を見出して、その人に積極的に投資して(留学等)、国際団体で理事として発言していける素地を作っていく必要があります。そういう場所では、残念ながら「(かつての競技者としての)顔」だけでは勝負できません。今のIJF理事も、別に世界的な柔道家ばかりが名を連ねているわけではありません。そこには結構ドロドロした政治的駆け引きも必要です。


 この「各競技の国際団体に理事を出す」というのは各団体が単独でやるというよりも、文部科学省が全体を統括するプロジェクトとしてやっていいんじゃないかなと思います。残念ながら、日本の国内団体の中にはそういう意識が必ずしも強くないところがあるようですので。