【以下はFBに書いたものを加筆して転記しています。】

 中央アフリカ共和国へのフランス軍事介入を認める国連安保理決議が採択されました。アフリカ諸国群からなる中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA:Mission Internationale de soutien a la Centrafrique)に対して12ヶ月間の軍事行動のマンデートを与え、それをフランスが支えるかたちとなります。

 この国は「指導者か悪いと国がダメになる」という典型的な国です。一昔前は皇帝を僭称し、贅沢を尽くしたボカサ1世がいました。皇帝就任式を豪勢にやり過ぎて問題になったとか、当時のフランスのジズカール・デスタン大統領は、ボカサから高価なダイアモンドを貰ったことがすっぱ抜かれて、自身の2期目のチャレンジ失敗の一因となったこともありました。それに加え、
前の大統領のボジゼ、その前のパタセ、いずれも如何なものかと思わせる指導者でした。

 ボジゼ政権に不満を持つセレカ(現地語で同盟の意)という勢力が同政権を倒しました。セレカは隣国スーダンやチャドから流れ込んできたイスラム勢力が、反ボジゼ勢力と組んで作った勢力でして、統一性は勿論なく、統治能力など全く期待できませんでした(セレカは結局解散しています)。ボジゼ政権が倒れた後、誰も国全体のことに責任を持てなくなり、現在、国全体がカオス状態というのが、雑ではありますが現状です。

 しかも、略奪、襲撃の日常化に宗教対立の要素が入っています。セレカを構成していたイスラム教徒は国民の20%、残りの80%はキリスト教徒です。しかも、そもそも論として中央アフリカにはイスラム勢力は住んでいなかったのです。キリスト教とアニミズムからなる国でしたが、昨今のスーダン・ダルフール問題だとか、チャド内戦だとか、色々あってイスラム勢力が中央アフリカにも流れ込んできているというのが実際のところで、元々のキリスト教徒やアニミズムの勢力と調和できるはずもありません。国内はジェノサイド一歩手前と言われます。460万人の人口の半分は人道支援が必要なくらい事態は悪いです


(ちょっと、最近アフリカ中部で気になるのが、アルカーイダ的な手法(誘拐、身代金)が南下しているように見えるのです。これまでは北アフリカ限定だったのが、ナイジェリア北部のイスラム地域やカメルーンとかでも見られるようになってきました。何の根拠もないのですけど、イスラム・マグレブ地域のアル・カーイダ(AQMI)の影響力やその文化みたいなものが少しずつ南に伝播しているのではないかなと懸念します。一昔前は、イスラム主義者がマリ北部に巣食ってテロの温床になるなんて話は想像もできなかったんですけどね。)

 今回、漸くフランス主導で安保理決議にまで漕ぎ着けました。他の国はあまり関心がないとされています。一部の国は「フランスの旧植民地の話でしょ。自分でやったら?」くらいの雰囲気すら感じます。しかし、フランスは最近マリにも介入しましたし、カネがあまりないはずです。決議では、必要に応じてPKOに移行していくとなっていますが、アメリカが「オペレーションに掛かるカネは自発的拠出による信託基金でやるべし」と主張して、そうなりました。国連負担で危険性の高いオペレーションには及び腰な国は少なくありません。

 しかし、マリの軍事介入でも同じような信託基金を作りましたが、4億5千万ドルを予定していたのに、現時点では4000万ドルにも満たない状況です。勿論、今回の中央アフリカでもアメリカやロシアが気前よく出すはずもありません。そろそろ、マリと中央アフリカの2面作戦で苦しいオランド大統領が安倍さんに電話してきて「お金出して」と言っても不思議ではありません。

 MISCAは、「間違いなく失敗する」とか、「Mission Impossible」とか国連内では言われているそうです。3600名で構成されるはすが、現状はカメルーン、ガボン、チャド等で2500名しか集まらない、しかもアフリカの兵は装備も能力も不十分とされています。フランス軍は、現状の650名を倍にして増派しますが、結構広い中央アフリカの安定化を図るために十分かどうかは疑問です。しかも、これでカネがなければ間違いなく失敗するでしょう。せいぜい首都バンギ周辺の鎮静化くらいにしかならない恐れがあります。オランド大統領は「このオペレーションはそんなに長くはやらない」と言っていますけど、そんなに上手くは行かないような気がします。

 中央アフリカという国、地図で見ていただくと極めて多くの国と国境を面しています。正に「中央」アフリカでして、ここが底が抜けたように不安定してくると周辺国への波及大なんですね。国連内の駆け引きも含めて難しいんですが、日本政府も考え方くらいは纏めておいた方がいいでしょう。カネを求められたらどうする、PKOになったらどうする、ODAの使い方・・・、色々なことがあり得ますから。