大学入学時に「ああ、全国にはこんなにスマートで賢い人がいるのだな」と感心した同級生がクラスに3人いました。色々な意味で、北九州から上京した私にはそういう存在が新鮮でした。逆に彼らには私が「ガツガツした地方県立高校出身者」くらいに見えたことでしょう。


 その内の一人はその後、某省で働き始め、花形ポストで活躍していました。私とは同じ役所ではありませんでしたが、いつも仕事の厳しそうな部局を巡っていたので、「ああ、こういう男は何処に行っても評価されるのだな。」と、大学一年次に私が抱いた感想を自分の中で裏打ちしていました。


 その同級生が突然、役所を退職しました。不惑を前にしての退職、議員会館でちょっとだけ話をしました。「本当にもったいない」という思いを持ちつつも、私も同じように役所を去った人間なので、その気持ちの幾許かの部分が理解できるような気もします(そう思っているのは私の独りよがりなのでしょうけど)。


 私は外務省入省時に「40歳まで役所に残っていたら、そのまま最後まで外務省に奉職しよう。」と思っていました。何故そう思ったのかはよく覚えていませんが、多分、20代前半の時に「それくらいになると、なかなか完全な新天地に身を投じることは難しいのではないか。」と判断したのだろうと思います。それが正しいのかどうかは、今の私には判断ができません。ただ、その40歳になってかけがえのない同級生が役所を去ったというのは特別な感慨があります。


 20代前半で仕事を始めて、そろそろ折り返し地点に近くなってきたと見ることもできるかもしれません。「ああ、もう自分も不惑なんだな。惑ってばかりだけども...。」、そんなセンチメンタルな気持ちになりました。