サンフランシスコに着いてからというもの、アメリカに馴染みのない私には色々な新鮮なことがあります。
まずは多様なエスニシティが入り混じっているということには驚きを感じます。「ウズベク系、タジク系、アフガン系も結構な勢力なんですよ。」と言われて感心しました。まあ、アフガン人は昔からお国の事情により外国に出ているのでよく分かるのですけども、きっとソ連時代はあまり移民などしていなかったはずのウズベク系、タジク系が既に一定の勢力ですからね。その民族としての生命力には感嘆します。
中華街の近くのヒルトンに投泊しましたが、ホテルから見ていると同じ中華系でも本土系と台湾系が入り混じっています。何故、それが分かるかというと本土中国の旗と台湾の旗が両方立っているからです。国を離れて移民で来ているのに、今さら本土も台湾と張り合うこともなかろうに、と思うのですが。多分、住んでいる中華系アメリカ人の大半はそんなことには関心がないはずで、一部の特定の政治的背景を持つ方が頑張っているのでしょう。もしかしたら、それぞれの本国政府からの幾許かの圧力があったりして、仕方なしに旗を掲げているという事情もあるのかもとすら思いたくなります。
この多様なエスニシティ、私は日本でも実現しないかなと思っています。一般的に日本はそういうのを恐れる傾向があります。その御懸念は「日本文化の良さが失われるのではないか」ということだろうと思います。私は「その程度で失われるほど柔な文化ではないですよ、日本文化は。」と確信しています。日本社会というのは、多様なエスニシティをその内部に包容するくらいの奥の深さはあるでしょう。普段、自国文化にあれだけの自信を持っている日本人が、ことこの点になると突然「日本文化が外国に席巻されるのではないか」と不安になる必要はありません。
将来、東南アジア系日本人、インド系日本人、中東系日本人、アフリカ系日本人がどんどん出来てくることを恐れる必要は全くないと思います。その経過の中で、また一段高いところに昇華された日本文化が生まれてくるでしょう。私は「大丈夫ですよ。1世はなかなか難しいところがありますけど、2世、3世になれば日本の大事な国民として統合され、また、その新しい日本人が新しい日本の価値観を作っていきますよ。」と過剰なまでの楽観論を持つようにしています。
よく「欧州ではマグレブ移民が問題を起こしているではないか。治安の悪化にならないか。」という問題点が提起されます。決してその可能性を否定しません。ただ、逆にそこは日本文化が持つ社会秩序に対する抑制的な要素がプラスに働くのではないかと思っています。あの東日本大震災の時、暴動が一件も起きなかったことは日本文化の美徳ですね。あの文化をきちんと継承する限りは欧州とは事情が異なるでしょう。
日本がチャンスのある国だと思われ、そして、そのチャンスに国外の方が着目し、どんどんチャレンジしに来てくれるようにすべきだというのが私の持論です。入国管理、労働法制・・・、色々な国内のくびきがあります。それを大胆に改廃して、どんどん日本にチャンスを見つけに来てほしい、サンフランシスコに来てみて、そういう歴年の思いを改めて自分の中で確認しています。
そんなことを思いながら、サンフランシスコの街を歩いていますが、あえて一つだけ苦言を呈すれば、あの「得体の知れない日本料理(と称する食べ物)」だけは何とかならんか、と思います。そもそも、日本料理屋を日本人や日系の人が経営しているケースは稀ですから仕方ないのですけど、「これは違うんじゃないか」という残念な気持ちになるものを見たことが数回ありました。