今回の震災の関係で募金活動をした際、ちょっとした困難に当たってしまいました。「政治関係者が募金活動をすること」について、日本の法制度にはこんなに難しいことがあるのかということを知っていただければと思います。


 まず、そもそも「衆議院議員緒方林太郎」が募金を募ること、これは合法です。ただし、私は募金をしていただいた方には領収書を出すことは出来ません。私が最終的に受領するわけではないので当たり前です。更には、頂いた募金を私の名前で誰かに渡すことはできません。それは(場合によっては)公職選挙法で禁じる寄付に当たるおそれが出てくるからです(そもそものモラルの問題として、人様のご浄財を私の名前で渡すことなどできるはずもありません。)。勿論、そこで領収書を取ることもできません。


 ここまで来た時、「ああ、つまりこのケースにおける緒方の役割というのは、あくまでも多くの方の募金という行為と募金の最終受取者との間の純然たる橋渡し役に過ぎないということなのだな。」ということがご理解いただけると思います。法的には完全に黒子、何処にも出てこない存在になります。


 別に私はこれで全く差し支えないのですが、ここで幾つかの問題が生じうることにお気づきいただけるでしょうか。


1. 寄付に伴う税控除したい方のご要望に応えようとすると事務作業が膨大になる。

 幾つかの団体への寄付は税控除の対象となります。募金をし、かつ税控除したい方がおられた場合、私がその領収書を頂いてくるところまで代行すればこの問題は出てきません。これは一つ一つの作業はそれ程複雑ではありませんが、大規模にやろうとすると事務的には相当大変になるでしょう。特に街頭募金において、税控除の要望に対応しようとするとかなり大変だと思います。


2. きちんと寄付が最終受取者に渡ったかを証明することが難しいこともある。

 ここは「衆議院議員」という肩書を信用してもらう以外にないわけです。緒方林太郎として領収書がもらえないので、いつ何処にどういうかたちで渡したのかを証明する公的な紙がないということになります。領収書でない受領証明書みたいなものを貰うということなのかな、という気もしますけど、相手側からすると奇妙な印象を受けるでしょうね。勿論、1.の作業をやって領収書を取るのであれば話は別です。


 まあ、とても単純かつ口の悪い言い方をすれば「民主党という政党に寄付をすれば税控除があるけど、民主党という政党を通じて震災対策のために寄付をした場合、税控除がしにくい(できないわけではないけど、手続き的にかなり煩雑。)。」ということになります。これは別に「民主党」だからそうなのではなくて、恐らくすべての政党において同じことが言えます。この事務量の多さを正当かつ合法なかたちで回避することはどの政党でもできないはずです。


 現在、うちの民主党では街頭募金をベースにやっていることから、基本的には上記のような問題が生じ得ます。逆に考えると、街頭募金とは別のかたちでの寄付で税控除を求められる方は、そもそものところで税控除が行える団体(地方自治体や赤十字社)に直接ご寄付いただくほうがいいという考え方があるからです。一方で、自民党などは税控除に伴う上記の煩雑な事務作業までをも引き受けています。そこは考え方の違いだとは思いますけども、素直にその労には敬意を表します。


 こういった話には別に解決策がすぐに出てくるわけではありません。日本の政治文化を考えた時に、どうしても公職選挙法上の「寄付」という用語のスコープを厳格化していく必要があったことも事実です。ただ、なんか窮屈ですよね、これ。