代表選について、少し補足的に思うことを書いておきます。


 私は経済浮揚策の見えない形で「雇用」だけを主張することには違和感を覚えます。「それって何なんだろう」と思うわけです。ハローワーク等の職員増みたいな政策で、その目標がすべて満たされることはないはずです。景気を浮揚して、それが「雇用回復なき景気回復」にならないように、雇用に繋げるための政策を講ずることは必要でしょうが、そのプロセスがなくして「雇用」が政策の直接の目標だということがあるのなら、それは何なのかということになるわけです。


 私が一番最初に思い浮かんだのは「ユーロコミュニズム」という言葉でした。私はフランスに住んでいたので、ミッテラン大統領、モーロワ首相の政権(社会党と共産党の連立)の下での国有化政策が想起されます。「雇用」を直接の政策目標にする場合、財政のことを脇に置けば、一番手っ取り早いのは国有化による雇用拡大です。しかし、これはご理解いただけるように上手くいきません。モーロワ首相は、賃金インフレ、失業者増、財政悪化と、すぐにこの政策の失敗に直面します。


 まあ、さすがに誰もそこまでは考えていないことは明らかですが、「雇用」を直接の政策目標にするというのは、ともすれば同じような結果を招きがちなのです。雇用の数値目標を達成しようとするあまり、効率性のようなものが脇に置かれてしまい、結果として財政が更に悪化するわりには実効性がないということにもなりかねません。これは「政策の中身がない」ということではなく、「政策の目標設定がずれている」というふうに映ります。


 もう少し書くと、今、事業仕分けで公共事業関連の特別会計仕分け主査をやりながら感ずるのは、(陳腐ではありますが)国が未だに地方の細かい事業に人をつけ、金をつけ、そして口を出しているという現実です。「作るのは国が責任を持ってやり、管理するのは予算と権限を与えて地方に任せればいいではないか。」と感じます。多分、国が費やしている予算の8掛けくらいの予算を地方に移管すれば、二重行政の排除等を通じて、同レベルのサービスが提供できるような感じもあります。そういう文脈で見ると、「補助金等の地方への交付金化」というのはピンと来ます。地方分権、出先機関改革という大きなテーマとも絡んできます。


 ただし、法定されているような固定費的色彩の強いものについては、交付金化しようとも大して変化はありません。そういう意味で20兆以上の金額をベースにこのアイデアを進めようとするのは、明らかにミスリーディングであり非現実的です。ただ、投資的経費みたいなものについては、交付金化することで明らかに効率化+削減効果を実現できるでしょう。


 なお、特会改革で数十兆円のお金が出るというのは、特会の仕分け主査をやっている者からすれば「おいおいおい」という感じです。誰もが期待している外為特会に積み上がっている米ドル資産は、現在のレートで計算すれば超赤字で負の埋蔵金が存在しています(ただし、現在の円高の際に米ドル資産を放出することはなく、円安の時でないと放出することは想定されないので、そもそも時価計算するのが正しいのかどうかという議論があることは承知しています。)。まあ、いずれにせよ「特会の埋蔵金神話」はそろそろ止めにした方がいいでしょう。


 最後にちょっと小難しい話をします。今回の代表選を通じて、以前も書いたように、代議制というのは「自由委任」なのか、「強制委任」なのかということに思いを馳せました。フランス革命を見たエドモンド・バークは、「第三身分」に不信感を持ったのか、「自由委任」という概念を強く打ち出しました。「まあ、その中間の『半代表』くらいのところにいるんだろうな。」と自分では割り切っていますが、前回も書いたように永田町での雰囲気と地元の感じに大きな乖離がある中で、そんな思想的な頭の体操もしているところです。


 比較的自由闊達に書きました。こういうことを書くと、また、明日からメディアの方に「あのブログを読む限り、緒方さんは●●さん支持なんですね。」と聞かれるんですよね。ちなみに、私のお返事は「ご想像にお任せします」です。