こんばんは ( ̄ー ̄)

死別した直後
引っ越したいと思った

住宅ローンは
団信保険でチャラになり

相続も完了したから
安心して住める

にも関わらず
引っ越したいと思った

22年前に従妹が離婚した時
同じようなことを言っていた

引っ越したい…と
どこか誰も知らない所に行きたいと

従妹の夫は持ち家の権利を
放棄して出て行ったから

そのまま住めるのにそれでも従妹は
引っ越したいと言っていた

その時の私には 従妹の気持ちが
まるで分からなかった

けれど 旦那と死別した時
私も同じことを思った

どこか誰も知らない所に
引っ越したい…と

それをしなかったのは
この家の あそこにもここにも

旦那の残像が残っているから
そこに ふと…いる気がするから

行ってきますと出掛ける旦那
夕方 ただいまと帰宅する旦那

寝転んでテレビを見る旦那
靴を履こうとして壁に手をつく旦那

お風呂の湯船に浸かる旦那
ワンコの散歩から帰ってくる旦那

休日に
家庭菜園に水をやる旦那

帰宅する私の車を
遠くから見つけて

玄関横で
ひょうひょうと待つ旦那

そこにも ここにも あそこにも
旦那の残像が残っている

だから 引っ越しは踏み留まった
でもね 今でも思うよ

どこか遠くに行きたい…ってね
誰も知らない外国でもいいや…

家にいれば 私は今でも
旦那の奥さんでいられる

でも 一歩 外に出れば
私は旦那と死別した可哀想な人

私の中では今も旦那の奥さんなのに
世間はそうは見てくれない

それならば いっそ
誰も知らない所がいいな…ってね

もう普通の日常には
どうせ 戻れないんだから



家にあれば筍に盛る飯を草枕
旅にしあれば椎の葉に盛る
                                           有馬皇子