ホテルになど行けるはずは無かった


いつもの逢瀬は
あらかじめ彼が部屋を用意している
そこへ別々に向かうのだ
決して一緒にいるところを
誰かに見られる訳にはいかない



けれど
こんな昼間の約束のない逢瀬は…

適当な場所なんて…ない



「撮影が早く終わったんだ」



車を走らせながら彼が話始めた



「そう
ありがとう
連絡くれて…」



「ん
はぁ
くそっ」


ひとつになれる場所を探し苛立つ気持ち
それを隠そうとしない彼は
なんだか子供みたいで
私の心の柔らかい所を刺激した





しばらく走ると
工場沿いの川に出た
殺風景な町並みに不釣り合いな満開の桜の木の下そこに彼は車を停めた




「ごめん…
なんも考えず連絡して」


そういうと寂しそうな瞳でわたしを見つめた


「どうして謝るの?」

「だって
久しぶりに会ったのに
なんか…俺…焦っちゃって…」


「ふふふ
確かに…太輔くんらしくないね」

「はぁ
くそ」



彼の頬に手を沿わす



「可愛い…」

「え?
あ…ったく」





シートベルトを外し
私は彼の膝の上に乗る






「ねぇ…シート…倒して…」