スーツケースの中から
荷物を取り出す背中

その背中を見ていたら
大好き…
その気持ちがどんどん溢れ
思わず後ろから彼を抱きすくめた




「え?
あはは
どした?」


「ううん」


「ふふふ」





以前なら

「止めろよ
先に片付けさせろって」

って彼は自分の事優先してた


でも
最近は
そういうことが減って
私の気持ちがおさまるのを待ってくれる



今も…


彼の首に巻き付けた私の腕にそっと手を重ねて
スーツケースの片付けを中断してくれている


たったそれだけのこと…


けれど
そんな些細な事が
私の気持ちを思いやってくれている
何よりの証明のような気がして
わたしを満たしてくれた
1日経って香水と汗の混じった彼の香りを
瞳を閉じて深く吸い込む



彼の耳の後ろに軽くキスをしてから

「ありがと」

そう言って抱きしめていた腕の力を緩めた

彼が身体の向きを変えると
私の手にガラスの瓶を渡した

「なぁ?」

「ん?」

「はい
お土産」

「え?」



そう言って渡されたのは
クランベリージュース

「え?
なにこれ?」

「ん?
試験管の中の媚薬だよ
ははは」



媚薬…?!

ああ…彼のソロ曲の演出の…



「ふふふ
あの媚薬がクランベリージュースだなんて」

「それが一番イメージの色にあってたんだ」

「そうなのね」

「余ってたから貰ってきた」

「ふふふ
そうなの?
じゃあ冷やしておくね」

「ん?
いや…」

「え?
冷やした方が美味しいでしょ?」

「ん……」

「ん?」

私の手からジュースを取ると
そのふたを開け私の瞳を見据えたまま
彼がその赤い液体を口に含んだ


あごをくいっと持ち上げられる
その先のことを夢想し
私は唇を小さく開いた

重ねられた唇の隙間から
彼の体温で温められた液体が注がれる
甘酸っぱいそれは彼の唾液と混じりあい
さらに甘味を増しているようだった

唇から溢れた液体が
わたしの首筋を流れ落ち
ルームウェアの胸元を汚した



「あ…色が…汚しちまった」

「うん
全然…大丈夫」

「ふふふ
そっか」

「ねぇ…」

「ん?」

「もっと…
もっと…欲しいな」

「ふふふ」


彼の手にある瓶を今度は私が口に含む

「そんなに…うまいか?」

彼の問いかけには答えず
私は立ち上がり彼を見下ろし
その唇に口を重ねようとした瞬間
彼が私の首もとを強く抱き寄せ
彼の唇が私の唇を覆った



注ぎ込むのではなく
彼に吸いとられる私の中の媚薬
吸いとられた後
彼の舌が私の口腔内に残る全てを
舐めとるように絶え間なく動いていた…