脱ぎ捨てられた上着が
ソファへと乱雑に投げ掛けられていた
合鍵をバッグにしまい
彼の上着をハンガーへとかけ
ソファに座った
彼の浴びるシャワーの音が微かに聞こえる
“今夜帰る”
それだけのLINE
それは…部屋に来いという暗黙の命令
彼は私が人妻だということを
忘れているのだろうか?
こんな時間に家を開けることが
どれほど困難か…
でも
ほんとうは
そんなことはどうでもいいのだ
彼に…会えるのだから
舞台の稽古が始まってから
ずっと会えずにいた
舞台が終わったと思ったら
ライブのリハーサル
LINEの無い日もあった
このまま終わるのかも…しれない
主導権を握るのは彼
私は…どうすることも出来ないのだ
腰にタオルを巻いた彼が
頭を拭きながら出てきた
「来てたんだ」
「ええ
今さっきね」
彼のシャンプーの香りが
私の中の彼への想いを膨らませていく
滑らかな彼の褐色の肌が
私の中に降り積もった欲望に火を灯し
その熱が私の身体を支配し始める
