帰んな……って…


そう言われて
ガッカリしている自分に驚いた




幸せで満たされた生活
だけどいつも何か
違うものを求めていた

単調に繰り返される毎日
家族となった夫との義務的な交わり
近頃は…会話も事務的になっていた
それが結婚というものなのかもしれない
それを思うと
ふと
心がかさつくようなザラザラとした感じに
胸が痛むのだった

そして
ママ友達との
他愛のない会話…
園に入った頃は
仲良く話せるお友達が出来た事が
ただ嬉しかったのに…

ママ同士・子供同士…さらには旦那の職業…
そういった事が
会話の中からさりげなく聞き出され
そして…ランク付けされる
……嫌気がさしていた



あのお宅よりは…
恵まれている
あの子は…頭がいい
あそこ…もう二人目か
うちもそろそろ…
ねぇ?あなたのところは?
作らないの…?
あそこのご主人
昇進されたそうよ
……………



何気ない一言に
幾度となく頬を引き攣らせてきた

そして
私もまた何気なく放った一言で
誰かを傷つけてしまうかもしれない
そう思うと
今日のような集りに付き合うのは
月に一度が限度だった





ふふふ



我ながら可笑しい


蔑ろにすると
ややこしくなるママ達との集まりをすっぽかし
こんな見ず知らずの男に
ノコノコとついて来て
挙句
帰れと言われる




「ふふふ」







「何?
どうした?」

「ううん」









嫌だなんて
少しも思っていない



むしろ
光栄だ



こんなに若くて美しい男が
興味を持ってくれたなんて…




彼と関係を持つ事で
今の満たされた生活は壊れるかもしれない…
もしかすると…
全てを…失うかもしれない…




全てを失う覚悟…
そんなもの…あるはずも無い




けれど
このまま
この部屋を後にして
今まで通りの生活を送ったとしても
きっと
もう心から笑う事は
無いのだろう…