部屋に戻ると
座卓いっぱいに料理が
広げられていた
席に着くと女将が酒を持って現れる
「この地酒をお探しと
お聞きしておりましたので…」
私は驚いた
二人で読んだ小説に出て来た地酒
主人公がそれを呑む場面の描写に感嘆し
冷やされたそれを一度呑んでみたいと…
そんな話をしていた事を…思い出した
驚く私を
彼が満足そうに見つめていた

女将が私に酒を注ぎながら話す
「これからお食事…
そんな時になんなんですが…」
「はい?」
「台風が思ったよりも速く進んでるようで…
今夜はこの辺を通過するとか…
もしも…
お時間許すのであれば
今宵はご宿泊された方が安全かと…
ご用意は出来ておりますので…」
戸惑いを隠せない私は
すがる思いで彼を見つめた
泊まる…
そんな事は…出来無い
私の気持ちを察知したのか
彼が口を開く
「…あ
台風か…
泊まりたいのは山々なんだけどな
でも
朝イチで仕事入ってるから…
今日は…帰るよ」
「そうでございますか…」
「台風か…
じゃあ…
ゆっくり…出来無いか…」
「そうですね
高速も速度規制かかるでしょうし…
この嵐の中の運転は…
明るいうちに戻られた方が…よろしいかと」
昂ぶった気持ちが冷めていく
美味しいはずの料理も
味がしない…
恋い焦がれた地酒の酔も
私の身体に熱を灯す事は無かった
「気になるんだろ?
連絡してみたら?」
彼と一緒の時は
スマホは手にしない
見なくても済む…
そんな日にしか…
そんな時間にしか…会わない
月に数度の彼との逢瀬…
些末な日常を持ち込みたくは無かった
「…ごめんなさい」
バックからスマホを取り出すと
点滅する灯りが私の心臓を鷲掴みにした
着信したメールは
いつものショップからのDM…
それと…学校から…
微かに震える手で開く
“台風接近に伴う臨時休校について”
それは午後の授業を取りやめ
年度始めに登録した下校の方法に従い
子供達を帰宅させる意図の内容だった
専業主婦の私は
学校まで迎えに行くと登録していた
「どうしよう…」
「ん?
どうした?
なんかあったか?」
「ええ
子供達が帰ってくるの
私…行かなきゃ」
「え?」
「ごめんなさい
お願い…連れて帰って」
「……ん
わかった」
食事は…半分も終わっていなかった
彼に申し訳無いという気持ちと
子供達への罪悪感…
激しく突かれたそこに感じる違和感が
私を責めるように
彼を受け入れた名残りを主張するのだった
座卓いっぱいに料理が
広げられていた
席に着くと女将が酒を持って現れる
「この地酒をお探しと
お聞きしておりましたので…」
私は驚いた
二人で読んだ小説に出て来た地酒
主人公がそれを呑む場面の描写に感嘆し
冷やされたそれを一度呑んでみたいと…
そんな話をしていた事を…思い出した
驚く私を
彼が満足そうに見つめていた

女将が私に酒を注ぎながら話す
「これからお食事…
そんな時になんなんですが…」
「はい?」
「台風が思ったよりも速く進んでるようで…
今夜はこの辺を通過するとか…
もしも…
お時間許すのであれば
今宵はご宿泊された方が安全かと…
ご用意は出来ておりますので…」
戸惑いを隠せない私は
すがる思いで彼を見つめた
泊まる…
そんな事は…出来無い
私の気持ちを察知したのか
彼が口を開く
「…あ
台風か…
泊まりたいのは山々なんだけどな
でも
朝イチで仕事入ってるから…
今日は…帰るよ」
「そうでございますか…」
「台風か…
じゃあ…
ゆっくり…出来無いか…」
「そうですね
高速も速度規制かかるでしょうし…
この嵐の中の運転は…
明るいうちに戻られた方が…よろしいかと」
昂ぶった気持ちが冷めていく
美味しいはずの料理も
味がしない…
恋い焦がれた地酒の酔も
私の身体に熱を灯す事は無かった
「気になるんだろ?
連絡してみたら?」
彼と一緒の時は
スマホは手にしない
見なくても済む…
そんな日にしか…
そんな時間にしか…会わない
月に数度の彼との逢瀬…
些末な日常を持ち込みたくは無かった
「…ごめんなさい」
バックからスマホを取り出すと
点滅する灯りが私の心臓を鷲掴みにした
着信したメールは
いつものショップからのDM…
それと…学校から…
微かに震える手で開く
“台風接近に伴う臨時休校について”
それは午後の授業を取りやめ
年度始めに登録した下校の方法に従い
子供達を帰宅させる意図の内容だった
専業主婦の私は
学校まで迎えに行くと登録していた
「どうしよう…」
「ん?
どうした?
なんかあったか?」
「ええ
子供達が帰ってくるの
私…行かなきゃ」
「え?」
「ごめんなさい
お願い…連れて帰って」
「……ん
わかった」
食事は…半分も終わっていなかった
彼に申し訳無いという気持ちと
子供達への罪悪感…
激しく突かれたそこに感じる違和感が
私を責めるように
彼を受け入れた名残りを主張するのだった