岬の近くの

ひっそりとした旅館だった



「ここ…
結構穴場…なんだって」

「そうなんだ」





訳知り顔の女将が

柔らかな笑顔で部屋へと案内してくれた




「すぐに…お食事になさいますか?
それとも
少し後の方がよろしいかしら?」

「ああ
そうだな…
どうする?」

「私…お腹空いちゃった」

「ははは
そっか
じゃ
食事頼むよ」

「かしこまりました
すぐにご用意致します」








本当はすぐにでも

彼と抱き合いたかった

けれど

こんな落ち着きある料理旅館で

欲望を丸出しにする事が憚られた


通された部屋からは海が見えた


雨の影響なのか

白波が立ち荒れている事が見て取れた



「俺
風呂入ってくるわ
あんたは…どうする?」

「そうね
私も入ろうかな」






浴場までの館内

人と出会う事が無かった


平日の昼間…

だとしても…

他に客が居てもいいだろうに…





「ねぇ?
もしかして私達だけ…とか?」

「ああ
そうだよ
一日1組だけ…
だから…安心しな」




そういうと彼は私の手を取った



「だからさ…
一緒に…はいろっか?」