握った手を強く引かれ

彼の体へと引き寄せられる



重ねられた唇は柔らかくて

優しいその感触が心を温める

ただ重ねるだけ…

そんな幼いキスは

今の私達にお似合いなのかもしれない






繋いだ手を離し

彼が私の腰を抱く


それと同時に

彼の唇が私の唇を啄むように動く

それに合わせて

私も唇を開く…

その時

扉の開く音がして

この部屋の住人と

その恋人が帰宅した事を

私達に知らせた




慌てて体を離し

何事も無かったようにソファへと腰掛ける




「ただいま」

「お帰りなさい」

「飲んでる?
遠慮しないで
どんどんやっちゃって」

「先輩…どこ行ってたんすか?」

「え?
ははは
秘密だ
な?」



そう言って友人と瞳を合わせ

微笑み合うふたりの姿は

親密さを漂わせる





4人で飲みながら話す



先輩の話術はテレビで見るまま巧みで

会話が途切れる事は無かった

時折

彼が私を見つめる視線とぶつかる

そのたびに

彼の微笑みが私を幸せな気持ちにさせた







「すっかり遅くなっちゃいました
そろそろ…
失礼…しますね」

「え?
そう?
もっとゆっくりしてきなよ
明日は休みでしょ?」

「ええ
でも…」

「なんなら
泊まってもいいんだよ
部屋ならあるから…」

「ありがとうございます
でも…
せっかくのふたりの時間
邪魔したくないし…」

「ははは
そっか
でも…俺ら…いつもふたりでさ
こうやって過ごすの
コイツの願いでも…あったんだよね」







誰にも言えない恋

友人にさえ

平気で裏切られる世界



ふたりだけ…



それでいいと言いながら

誰かに

ふたりの幸せを見届けて欲しくて…



「藤ヶ谷は真面目だし
俺を裏切る事はねーもんな
ははは」


そう言って彼の肩を先輩が抱く


「当たり前っすよ」

「りんちゃんも…そうでしょ?
コイツを裏切る事は…無いだろ?」

「もちろん…」

「またさ
四人で…飲もうな」

「ええ」

「はい」




先輩と友人に見送られ玄関へと向かう



「じゃぁ
先輩
俺…彼女送るんで
これで失礼します」

「ああ
そうだな」





部屋を後にし

エレベーターへと乗り込む



ドアが閉まった瞬間

横に並んだ彼が

私の手を握る




見上げた彼の横顔…




美しいその頬に反対の手を伸ばす




ん?





見下ろす彼の首に手を回し

引き寄せキスをした…