どれくらいの時間が過ぎたのか…

部屋は薄暗くなり始めた



「俺…そろそろ行くわ
なんか…かえって
気使わせて…ごめん」

「いえ…
こちらこそ
お引き止めしちゃって
お時間…大丈夫?」

「え?
あ…
それは全然…平気…」




静かな夕暮れ

急な雨は

夏の暑さを消し去り

涼やかな風が部屋を渡る


ソファで眠る彼女の息子


穏やかに漂う幸せの空気に

俺は…窒息しそうな胸の痛みを覚えた



「藤ヶ谷さん?」

「ん?
あ…じゃ…」








何考えてんだ…俺







彼女を抱きすくめたい…

女に苦労なんてしてやしないのに

ましてや

こんな…歳上の人妻




何…考えてんだ…










だけど

息苦しいのだ

寝息を立てる息子の髪を

優しく撫でる彼女…

その仕草が俺の弱い心を刺激する











俺も

あんなふうに

無条件で愛されたい…






そんな渇望が

俺の胸を締め付ける…









立ち上がった俺を

玄関まで見送る彼女



「今日は本当にありがとうございました。
また
改めてきちんとお礼させてくださる?」

「いや
そんなのいいよ
ただ
送っただけなんだから」

「でも
本当に助かったもの…
あ!」

「え?」

「シャツ…
貸してくれたチェックのシャツ
すっかり濡れちゃったから…
また
後日洗濯してお返しします…」

「いや
いいって
いいって…
ほら
今…持って来て…」

「ダメです」

「いいって」

「ダメです
ちゃんとお洗濯させて下さい」

「そんなの俺も出来っから」

「だけど
それじゃ
私の気持ちが収まらないの」

………





なんだ?

この押し問答…

意外に頑固だし…





くくくっ




おもしれー