「ありがとうございました
あの…」

「ふぅ
けっこう重いな」

「え?
ええ
おかげで助かりました」


そう言いながら

手慣れた様子で息子の濡れた服を脱がして

毛布でくるみ直した



「あんたも早く着替えた方がいいよ」

「ええ
あの…
お時間ありますか?
お礼に…コーヒーでも…」

「え…
ああ」

「じゃお座りになって」




手慣れた様子で

コーヒーメーカーに豆をセットする


「少しお待ちになってね」





そういうと

彼女はリビングをでていった



リビングの棚には結婚式の写真

その横には

赤ん坊と笑顔の三人の写真…



幸せ…そうだな






その写真たちを見つめていると

服を着替え

濡れた髪をまとめあげた彼女が戻ってきた



コーヒーのいい香りが部屋に広がる





「おやつにって
焼いておいたの
アップルパイはお好きかしら?」

「アップルパイ?
無茶苦茶好き」

「ほんと?
良かった
じゃぁ
沢山食べっていって」



切り分けられたそれは

程よい甘さとリンゴの酸味が口に広がり

何切れでも食べれそうだった




「…美味い」

「ほんと?
まだ…あるから」

「でも
アイツのぶんは置いとかなきゃな」

「ふふふ
大丈夫
ゆうのぶんはあるから…」





仕事終りで

何も食ってなかった俺は

おかわりをして

彼女のアップルパイを頬張った

その優しい味に

さっきまでの苛立ちはなりをひそめた…


苛立っていたのは

腹が減ってたせいか…



ガキかよ…俺