「寝ちゃったね」

「うん」

「あっちに連れてく?」

「うん」



抱き上げ布団へと降ろす


「なんだかんだ言ってさ
ママが帰って来たの…嬉しいんだよな」

「うん…
ありがとう
藤ヶ谷くんのおかけで
本当に…助かりました」


「だから…
いいって言ってんでしょ」

「うん…」

「さぁて
片付けようかな」

「うん」

「まいさんは座ってて」

「でも…」

「座る座る…」



洗い物を終えて戻ると
彼女は写真の中の“彼”を見つめていた



「…どうか…した?」

「ん?
ううん」

「…そ?」

「おちゃでも…淹れようか?」


そう言うと
写真立てを伏せ
彼女はキッチンへと向った




え?
なんで?
え…?






彼女とふたりっきり

変な緊張感が漂う
彼女から何を言われても
俺の気持ちは変わんねーし…
だけど…
まさか
もう来ないでくれ…
とかじゃねーよな




「藤ヶ谷くん…」

「ん?」

「ありがとう」

「え…あ…だから
礼は良いって
俺がかってに…」

「それね
その言葉…
あの人もそう言ってたの」

「え…」

「鎮痛剤打ってって頼むのに
“俺がこうしたいからしてんだ”って…
なんで?って
“こうしたいんだ…
だから…ほっといてくれ…”って」

「…」


「高価なお薬使いたくないってそう
言ってた…
でも
それ以上にね
薬を使う事で
私やるいの事…
わからなくなるのが嫌だって…」

「…」

「だから
私もずっと
彼だけを
彼の事だけをちゃんと
想っていなきゃいけないって
どんな事があっても
あの人が残してくれたこのるいと
ふたりで生きてかなきゃって」

「…」

「最後に
もう限界でお薬打つってなった時
あの人言ったの…
“俺は
もうお前たちの事が
わからなくなる…
だから
お前も俺を忘れていいんだからな”って」

「…」

「そんな事出来るわけないって…
そう言う私に…
“忘れるって約束してくれ…”
そんな事言うの…
そんな約束出来無いのに」


「…」



「そんな約束守れないってずっと
ずっと思ってた…
なのに…
ごめんなさい…
和也さん…私…」


「…」



「藤ヶ谷くん…
わたしって酷いでしょ?
大切な人…忘れようとしてるの
酷い…よね」


「…酷いって?
まいさん?」


「私…
私の中に
いつからか
藤ヶ谷くんがいるの…
熱で苦しくて…
でも
和也さんの痛みに比べたら全然マシ…
そう自分に言い聞かせながら
ほんとはね…
“藤ヶ谷くん…助けて”って
思ってた…」


「…」



「そんな酷い自分が許せなくて…
和也さんは最後まで私達のために
痛みに耐えていたのに…
私は…」


「…」


















俺は
無言で
彼女を抱き締めた…