午前中ずっとるいと泳ぐ


補助具をつけて泳ぐるい
補助具を外す事が怖いようだった
“大丈夫だから”
そう声をかけ続けて…
昼前には補助具なしでも
泳ぎ始めた




腹減ったなぁ…




「るい?
昼メシにしないか?」

「もっと泳ぎたい」

「もう俺むりだ」

「えーそうなの?
じゃあ仕方ないなぁ」

ははは


服を着替えて外に出る

秋の穏やかな日差し


近くの公園には家族連れが
もうシートを広げ昼食を取っていた



芝生の空いたスペースに腰を降ろし
彼女の作ってくれたお弁当を広げる


おにぎりに
唐揚げに
玉子焼き…

「俺の好きなのばっかりだ」

嬉しそうに頬ばるるいにつられ
俺も口にする




美味いなぁ









母親の作ってくれたお弁当を思い出した
3人兄弟の長男…
弟ふたりは俺よりも優秀で
物心ついた頃
母親はふたりの好みを優先するように
なっていた



いつからかな…

家に居るのが…しんどくなったのは…



母親の作る唐揚げも
こんな風に美味かった

だけど
唐揚げよりも
エビフライが好きだった弟達
遠足の弁当には
いつもエビフライだったな…







鉄棒で
逆上がりの練習をする小さな女の子がいる


「なぁるい?
お前…逆上がり出来んのか?」

「…ん…
で…きる…学校で1回出来た」


ふふふ
出来ねーんだな



「そっか
じゃあやってみ」

「え?いいよ」


綺麗に食べ切った弁当箱を片付け
鉄棒へと向かう


俺がしてみせる


「やってみ」

しぶしぶ鉄棒を握るるい



出来ない…
だと思ったよ


“肘を伸ばすな”
“お腹を離すな”

横にいた女の子と一緒に練習


るいは
運動神経がいい

ポイントさえしっかり飲み込めば
すぐにマスターする
さっきのクロールのように

何度目かのトライで…

簡単に回ってみせた


「出来た」


その笑顔…


彼女にも見せたいな…



写真を取ると彼女に送る
すぐに既読になる

「逆上がり?
出来たの?
見たかったなぁ」

今度は動画を撮って送る


「ありがとう
私が教えても出来なかったの
藤ヶ谷くんのおかげね」


飽きることなく回り続けるるい
横の女の子に
説明する姿が可笑しくて
思わずそれも動画に撮って送る


「るい?
すっかり得意げね
可笑しくて笑っちゃうな」




穏やかに流れる時間に
満たされていく心を感じていた



スマホが着信を知らせる
LINE…



「藤ヶ谷くん
今夜もバイト?」

「今日は休みです」

「用事が無ければ
うちで夕飯食べて」




え…
いいのかな…
嬉しいけど…



「いいんですか?」

「もちろん
じゃあ
遅くならないように
帰って来てね」








帰って来てね……か…




ニヤケる俺を
るいと女の子が不思議そうに見ていた