父が帰る日の明け方、

何度か父の寝言が聞こえてきた



「可愛かったなあ…

    本当に可愛かったなあ」



三回目にそーっと父を覗き込むと目を開いているので、「起きてるの?」と声をかけてみた



すると「うん、目が覚めてね…子どもたちが小さかった頃を思い出していたんだ」



そして「あの頃は僕の人生の最高の時だったなあ」としみじみと言う



「子どもたちがまだ小さくて本当に可愛かった」と何度か呟く父



ああ…寝言ではなかったのだ



私は「そうなんだね」と答え、布団に戻る



それ以上、言葉を交わしたら大泣きしてしまいそうだったから…



それから布団の中で息子の幼い頃を想いながら、父にとっても幼い我が子の記憶は、たとえ私が傍にいたとしても、補う事ができないものなんだろうと感じた



きっとその頃の父は仕事や子育てに奮闘していたに違いなく、そう言うエネルギッシュで若々しい我が身をも思い出し



過ぎ去った善き日はもう戻らない寂しさのようなものを感じているのだろうか…



私はうっすらと涙を溜めながら目をつむった