大晦日、夫が


「今夜、お庭で焚き火をしよう。


子供たちには焚き火はまだ危ないと思うから、子供たちが寝た後に。

焚き火をして、あたたかい飲み物を飲みながら、

地獄の2014年を忘れよう。」



夜、お庭で夫と焚き火をして、

二人でカフェオレを飲みながら椅子に座り、暖を取りました。



大晦日の夜、

米軍住宅は真っ暗。


周りの家はみんな、クリスマスイブから故郷へ帰っていました。



夫は紙に、


「薬物依存症」

「過去」

「苦しみ」

「怒り」


と書き、焚き火に投げ入れました。


「僕は幸せなはずだ。

最愛の妻子がいる。


それなのに優しい妻をとことん苦しめ、泣かせた。

君は怒っていて、僕をゆるしてはくれないだろう。


それでも君は朝、仕事にいく僕に、

『温かい下着を着てる?

外は寒いから。』と未だに、僕を心配してくれる。


僕は妻子のために、薬物依存症を治さなければならない。

これが最後だ、

2014年でもう家族の地獄は終わりだ。」


 



「私はあなたが薬物乱用をする度にいつも怒ったけど、

本心は、怒っていたわけじゃない。

悲しく、辛く、それがめちゃくちゃになり、怒りに変換された。


あなたが薬物乱用という自傷行為をすることが、

あなたの苦しみを思うと、かわいそうだと思った。

想像を絶する苦しみだと思う。

 


私の望みは2つ。

あなたの心と体の健康と回復。


そして家族仲良く、

あなたと親同士、

子供たちを、不安のない家庭の中で育てて、


あなたと一緒に子供たちの成長を楽しみ、分かち合いたい。


この子たちにとって、たった2人しかいない親は、私とあなた。


だから薬物乱用はやめようね。

あなたが心配だよ。」





「薬物乱用はやめる。

やめたい。

もう本当に本当にやめたい。」





私は

ここで一言 


ラク(薬)な方法に逃げちゃダメだよ…?」




夫は黙り込み、


「…ラクな方法?」





「そう、苦しくても、

ハイになってラク(クスリ)な方に逃げちゃダメだよ?」




夫はしばらく黙り込み、

目に涙をためて、


私の目を見て言いました。



「薬物乱用は…


全然ラクな方法じゃないよ?



薬物乱用は、

ハイになれるラクな方法かと誤解されるけど、



薬物乱用は…

地獄だ。


薬物乱用は…

地獄だよ。



信じてくれ。」





そうだったんだ。


薬を飲んでハイになって

逃げやがって、


と思っていました。


みんな苦しいことがある。

例えば津波でお子様を亡くされた方の苦しみは、想像を絶する。


それでもその方は、

お子様のランドセルを見つけて、

湧き出る水道で、一生懸命、ランドセルをキレイにされていた。

涙をこらえてこらえて、

それでも溢れ出る涙を必死で拭っていた。


苦しみの背比べをしてはいけないが、

夫よ。

あなたには子供が3人いる。

こんな幸せなことはないじゃないか。


何が要因だか原因だか知らないけど、

ハイになってラクな道を選んで甘えるなよって

思っていました。



私だって苦しい、

あなたのせいで。

でも薬物乱用なんかしないよ。

苦しくても苦しくても、

こらえて生きていくしかないんだよ。


それは自分の為だけでなく、

親の姿を見て育つ、最愛の子供たちの為なんだよ。

ハイになってラクな道を選んで甘えるなよって

思っていました。

 



「そうだったんだ…

全く逆だと思っていたよ。」




「君の家系に依存症者がいなく、

君の体質は依存体質ではないから、

こんなことはわからなくて当然だよ。」





「あなたが薬物乱用を止めるために、

私も手伝うね。」





「ありがとう。

しかしこれは僕ひとりが

『今日一日だけは』

で闘っていく問題だ。」





「本当にあなたの為に

私にできることはないかな?」





「実は…1つだけある。」






「なに?」





「君には妻としてだけじゃなく、

親友としてもいてほしい。


僕の薬物依存症のせいで、いっぱい喧嘩をして申し訳なく思うが、


僕たちは、夫婦だけじゃなく、

親友としてもとても仲が良かった。


沢山会話をして、

ジョークを言って笑い合った。


薬物依存症になる前は、

ケンカすらしたことはなかった。



これからも苦しい時は

お互い相談し合って助け合ったり、

親友でいてほしい。」






「わかった。

私もあなたを親友として必要だよ。」





「2015年…新しい年だ。

薬物依存症もここまでだ。


早めに日本に転勤にしてもらえるよう、

マスターチーフに頼んでくる。


そしてまた以前のように、

アメリカのことは忘れて、


日本で一生懸命、働いて、

昇格試験も頑張って

E7に昇格して、


君が誇れる夫、

子供が誇れる父親になりたい。」




「2015年の素晴らしい目標だね。

楽しみだな。」




「日本に帰ったら、最初の休暇で温泉に行こう。

君のお父さん、お母さんも連れて。


日本のラーメンも食べたいな。

心の底から、2015年が楽しみだ。」




夫が落ち着いた…


それから、

自身を薬物依存症と認めて、


本当に本当に、


薬物乱用から抜け出そうとしている。