ティナは「ついてきな!」と私を電話に連れて行き、
どこかに電話をしました。
私はティナがどこに何の為に電話をしているのか全くわからず、
ティナに聞かれるがままに、私の名前や住所、夫の電話番号を教えました。
電話の最後にティナは電話の相手に、
「本当、あなたは最高ね!
会ったことはないけど、I love you!」
次にティナは私の夫に電話し、
「今から言う電話番号にかけて。
話は通したから。
担当の名前は、◯◯よ。」
と伝えました。
それからティナは私に
「Bail bondsに電話をしたから。
凜は今日中に保釈されるわ。」
「Bail bondsって何?」
「凜の保釈手続きを代行してもらえるよ。」
「お金はかかるの?」
「手数料は保釈金の10%。」
しかし…保釈金は裁判に出れば、全額返金されるのでは?
それなら保釈代行業者に$500払うより、保釈金$5000を払って全額返金されればいいのでは?
私はこの騒動で、$500(5万円) を無駄にしたことになります。
ただ、ラリっている夫にその手続きをさせるのが心配だったので、ティナの言うとおりにしました。
それから数時間…
アナウンスが流れ、私の名前と共に
「帰宅の準備をしろ。」と呼ばれました。
すると沢山の囚人が集まってきて、沢山ハグをしてくれました。
「凜、おめでとう。」
「もう戻ってきちゃダメだよ。」
気づいたら、何人も友達ができていました。
部屋に戻ると、太った黒人のルームメイトのB子が手紙を書いていました。
私がマットレスをたたんでいると、手紙を渡されました。
「ああ、私に書いてくれたの?」
「そう。凜は英語は読める?」
「もちろん。」
「じゃあ今、読んでみて。」
「わかった。」
「声に出して読んでみて。
凜が本当に読めるか心配だから。」
ああ、お金がほしいんだな。
その手紙はまだ持っていたはずでしたが、どうしても見つかりません。
手紙の最初は、
「凜、私はあなたがここを出れてとても幸せだ。
あなたはここに戻ってきてはいけない。
凜は美しく賢い女性だから、それにふさわしい人生がある。
ところで私には、身寄りがいない。
(↑少なくとも、成人した子供がいるって言ってたのにな。)
誰も助けてくれない。
もしあなたに余裕があれば、
$50を送金してくれないか。
今は何も食べるものがない。
(↑昨日はスナック菓子を食べていた。)
まず今日、お家に帰ったら、インターネットでこちらの拘置所を検索し、『送金サービス』にアクセスし、私の名前とコードを入力して送金してほしい。
私の名前は◯◯、
私の囚人コード番号は◯◯。
本当にお願いだ。
助けてほしい。
私の名前は◯◯、
私の囚人コード番号は◯◯。
困っている、
だからあなたを信じている。
私の名前は◯◯、
私の囚人コード番号は◯◯。」
何度も繰り返し書かれた
名前と囚人コード番号。
「凜、私の手紙の意味はわかる?」
「わかるよ。B子にお金送るよ。」
「ありがとう!!本当に?信じていいよね?」
「送るよ。B子には昨夜のお礼もしたいし。」
「$50?」
(…いや、$25だな。)
「私もお金はあまり余裕はないけど、できるだけ送る。」
「$50?」
「わかった、わかった。」
「凜、この手紙、絶対なくさないでよ。」
「わかった、わかった。」
「今夜、送金できる?」
「わかった、わかった。
…あ、ちょっと他の人の部屋に行ってくる。」
私は他の人の部屋へ。
「ティナ!あなたの本名とコード番号を教えて!」
「どうして?」
「お礼がしたいから!」
ティナは笑いながら、
「いいよ、そんなこと。
お金は子供の為に使いな。」
「いいから、教えて!」
「私は何もしてないよ。」
私はティナの隣にいた、ティナが娘と呼んでいた若い黒人さんに、
「ティナの本名を教えて。あなたのお母さんは頑固で教えてくれないから。」
と頼み、教えてもらいました。
ちなみにこのような手紙は…
あと3人からもらいました
人気者な私
補足
Bail bonds(保釈金立て替え業者)は民間です。
保釈金を立て替えて保釈手続きを代行してくれますが、
その代わり被告人が裁判に出頭しなかった場合、保釈金立て替え業者は大損をする為、
保釈金立て替え業者が被告人を逮捕する権限が与えられています。
何と保釈金立て替え業者は銃の所持も認められており、警察官並みにドアを蹴っ飛ばして逮捕してきます。