夫は日本の米軍基地勤務でしたが、転勤シーズンを前に、必死で日本在留を延長しようとしていました。
そんな中、次の勤務地は、夫の期待通りではなく、生まれ故郷のアメリカの州に決まりました。
アメリカへの引っ越したは2011年8月末。
第1子 1歳10ヶ月
第2子 生後わずか5ヶ月
そしてまだ気づいていませんでしたが、
この時、すでに第3子は私のお腹の中にいました。
日本からアメリカへの引っ越しは、米軍がすべてを手配してくれた為、ラクでした。
米軍に「引っ越し中に、子供がいては危ないので、奥さんと子供は1週間近くのホテルに待機してください」と言われましたが、転勤シーズンの当時、近くのホテルは満室。
スイートルームしか空いていなかったのですが、
米軍が「空いていないから仕方ない」と、私と子供をスイートルームに泊めてくれました。
スイートルームから見た、日本の朝焼けの海…
初めてのアメリカへの期待と、日本を離れる寂しさで、いつまでも眺めていました。
まさに
「行きは良い良い、帰りはこわい」になるとは。
…帰りは悲惨でした。
2011年8月末、夏の終わり。
何もなくなった日本のマンションで、
夫は声を上げて泣きました。
夫が泣いたのは初めて。
男らしさにこだわる夫が、何もなくなった日本のマンションで声を上げて泣きました。
一緒にいた不動産屋の日本人の男性が
「日本で、子供2人産まれたもんね…。沢山の良い思い出があったんだね。また必ず日本に帰っておいで。」
と夫の肩を優しく叩いていました。
夫は、故郷アメリカに帰りたくなかったんでしょう。
日本で故郷を忘れて、一生懸命、働いて、結婚して、子供を育てて、
アメリカにいた時の暗い過去とは違う、
新しく華々しい自分の人生に夢中になっていたんでしょう。
その華々しい自分が突如、暗闇の過去に引き戻される、おそれの涙だったかのような、今はそんな気がします。