精神科の予約は、2週間に一度。


3回ほど通い、

もともと温暖な地域だった州は、春になりました。



私は焦っていました。


何故なら、

本当のことを話せていないからです。




グラッド先生にとっては、

私は”海外赴任妻あるあるのホームシック”や、

“乳幼児のママあるあるの子育ての悩み”など、


「大丈夫だよ、みんな一緒だから。」

みたいなノリでした。




確か3回目の診察が終わる5分前、


私は賭けに出ました。




グラッド先生は、軍医さんではありませんが、米軍病院のお医者様。


私が夫の薬物依存症の話をすれば、

グラッド先生は軍に報告義務があります。


報告されれば夫は懲戒免職になります。



しかし私は、

精神科医のような専門家に相談がしたかったのです。




私は決心して、


診察時間が残り5分もないのに、

こう切り出しました。



「グラッド先生、実はもう一つ、相談したいことがあります。」





「はい。」





「その前に…


一つ質問があります。



もし、私が

仮に、

『私の夫が、薬物乱用をしています。』

と言えば、


グラッド先生は、報告義務がありますか?」






グラッド先生は驚きを隠した様子で、冷静に、


「仮に、

その場合…


私には軍への報告義務があります。」





「理解します。


…では、例えば、

おかしな話ですが、



『私の大事な知人の話』として、

相談してもいいですか?」




緊張が走りました。


でも私はこう思っていました。



グラッド先生は、

同じ母親同士、

同じ女性同士、

きっと

きっと


理解してくださるはず。