夫と繰り返し起きる喧嘩、


レシートが見つかった、

目の瞳孔が開いている、


そんな中、

意味がないのに私は夫のクレジットカードの明細を取り寄せました。


2〜3日に一度

薬局で3箱の咳止めを購入している事実。



わかってもどうしようもないのに、

調べました。



何故、精神科医に相談をしなかったのか、

それは健康保険に理由がありました。



夫は軍人だった為、米軍病院にしか行けないのです。


日本のように、健康保険証を持って、勝手に好きな病院には行けないのです。


当然、妻の私もそうでした。


米軍病院にしかかかれないのです。



米軍病院は、軍医さんだけでなく普通のお医者さんで米軍の中で働いている方もいました。


軍医さんは、日本の防衛大学医学部のような、

軍の大学の医学部を卒業された方。


普通のお医者さんは、普通の医学部を卒業後、米軍基地内の病院に勤務されている方。



どちらのお医者様も、

米軍病院で働いている以上、

報告義務がありました。



「夫が薬物乱用をしている。」

こんな相談を米軍病院のお医者様にすれば、

軍に報告され、懲戒免職になります。


それだけはできませんでした。



しかし私は精神的に参り、夫のすすめで、米軍病院にかかりました。



日本のようにいきなり、精神科にはかかることはできず、


まずは家庭医と呼ばれる主治医に相談をしなければなりません。



私の主治医は、

コンラッド先生という初老のかっこいい男性でした。


コンラッド先生は、元軍医、

定年退職後、

嘱託医として残っていました。


コンラッド先生は日本に赴任したことがあり、

お酒を持ったタヌキ🍶の置物を母親にプレゼントをしたと嬉しそうに語ってくれました。


日本語で「タヌキさん」と言い、かわいいなと思いました。  



コンラッド先生のお母様は元音楽教師で、母親が弾けなくなったピアノを引き取った、と嬉しそうに楽器が好きな私に写真を見せてくれました。



私はコンラッド先生に、

「精神科にかかりたいです。

毎日が苦しいです。」


と頼みました。



コンラッド先生は、日本赴任が楽しかったらしく、日本人の私に親しみを感じてくれて、特にご親切にしてくださっていました。



コンラッド先生

「具体的に苦しい理由を話せますか?」




「心配していることがあります。

コンラッド先生は、私が話した話を、

軍に報告する義務がありますか?」



コンラッド先生は真面目な顔になり、

「もしあなたの相談が、あなたがご主人にDVなどを受けている場合、私には報告義務があります。」



コンラッド先生は、ジッと私を見つめました。



私はしばらく黙り、

「違います。ただ、海外生活のストレスです。」



コンラッド先生はホッとしたように、

「わかりました。精神科医を紹介します。


素晴らしい先生がいます。

女医であなたと同世代、あなたと同じ3歳の子供の母親です。

あなたと話が合うと思います。」





正直、私は少しガッカリしました。


30代前半の女医さんより、

ベテランの精神科医に相談したい、と何となく

「若くない、経験のある先生がいい。」と思っていたからです。


しかしせっかくコンラッド先生がそうおっしゃったので、

精神科にかかることになりました。



どういうわけか条件があり、

私が精神科にかかれるのは6回まで。


それ以降は不可だそうです。


きっと米軍の保険の規則なのでしょう。



はじめての予約は、日本の平成の天皇誕生日、

クリスマス休暇直前で、

アメリカのみなが幸せそうにしている時期でした。