テーブルクロスに
七面鳥とワインを並べ
それらをたらふく貪った
クリスマスに家族と食べたっけなんて
久しぶりにうまいと
思ったんだ
砂を噛んだような口の中に
鶏の肉汁がジュワッと溢れる
僕は喰べながら死ぬことを考える
妙な興奮が体の中から溢れ出して
ここ最近の食欲が嘘みたいに
地底から湧き出るマグマのように
バクバク喰い散らかす
明日から家に帰らなくていい
家に帰ってあぁ帰りてぇって思わなくていい
明日から通帳眺めてためいきをつかなくてもいい
明日から笑顔というセメントで塗り固めた顔も機嫌をとることしかできなくなった声も諦めながら歩く足も
全部全部とお別れするんだ
僕は食べながら涙を流したんだ
どうして
どうして死ぬと決めてからご飯が美味しくなるんだよ
どうして気力が湧くんだよ
どうして
…
諦めてからじゃ遅いんだ
母さん父さんごめんなさい
僕は弱かったみたいだ
エッチな動画をみても興奮しなかった僕は自分の死と向き合うことでしか興奮できないなんだ
苦しいよ
…
助けてよ
…
生きたいよ
…
誰も僕の言葉に耳を貸してくれる人はいない
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
と情けない声が響き渡る
鶏の肉汁とワインの甘さと
どこからか流れてくる塩っぱさがいいアクセントになる
僕は今日自由になった