翌日、私たちはまたいつもの様に4人でいた。
北山なおと秋斗は変わらず仲良くしていたし、北山なおも変わらずクラスの中心で、私をたまに構ってくる。
坂木茜も普段通りに接してくれているし、沢口くんも康太も秋斗もいつものように3人で笑っていた。
またいつもの日常が戻ってくるはずだった。
「広瀬さんって、男好きなの?」
耳に入ったのは私の名前を呼ぶ声。
声のするほうを見ると、話したことも無い女子生徒が5、6名立っていた。
「なんのことですか」
私より少しだけ背の高い女子の1人を見つめた。
偶然にも、今は沢口くんも康太も秋斗も購買に行ってていなかった。
私は教室に続く廊下で1人で3人を待っていたところだった。
「いや〜なんか、いっつも男3人連れて歩いてるからさ〜?」
その女子は挑発的な態度でそう言う。
「彼らはただの友達ですよ」
声に抑揚なく答えると、その女子はププ、と吹き出し「セックスフレンドの間違いじゃないのー?」とからかってきた。
はあ、と私は少しため息を着く。
「くだらないこと言ってないで少しは勉強でもしたらどうなんですか」
くだらなすぎて私はそう言い放つ。
女子は顔を真っ赤にしてワナワナと震えていた
「ちょっと頭がいいからって調子のってんじゃねーよ!」
肩を押されて壁に体を打ち付けられる。
「美和ぁ、もうやめなよ〜」1人の女子が私を押した女子をなだめる。
「うるさい!!黙ってて…っ
あんたとつるみ出して秋斗が付き合い悪くなっちゃったんだから!!」
涙を溜めた目で私にそう怒鳴りつけた。
「あ、秋斗……?」
私は唖然とした。なぜ、それで私がこんなことされてるのか理解できなかった。
「それ、私関係ないですよね……?
秋斗との問題は自分たちで解決してくださいよ。人のせいにばっかしてないで自主的に解決策を____」
パシン、と痛々しい音が響くと私の頬に痛みが走る。この痛み、知ってる……。
ばからしくて、微かに笑みがこぼれる。
「…ッハ……」
そして声に出して笑った。
ジンジンと痛む頬。なんで私こんなことされてるんだろう。
「分かったような口きくなよ!!このビッチ!!!」
今度は髪を掴まれる。慌てて囲みの女子たちはそれを止めさせようと間に入るが、暴走は止まらず、私も抵抗できずにいた。
「広瀬!!」
廊下に声が響くと女子たちの動きが止まる。
康太が走って駆け寄って来るのが見えた。
「なにやってんの?!」
焦った表情で続いて秋斗がやってくる。秋斗に続いて沢口くんが慌てて駆け寄る
「広瀬さん?!?!」
「あ、あ、秋斗……こ、これは…」
髪を掴んでいた女子は取り乱した。
「おいお前ら離れろ!」
女子たちと私との間に康太が割って入る。
沢口くんがすかさずそばに寄ってきて「大丈夫?!……?!ほっぺが腫れてるよ?」
「平気です……」顔が近くて、私は何故かそっぽを向いてしまった。何故だろう……。
「美和…お前、どうしてこんな…」
秋斗は呆れながら取り乱す女子と話していた。
「秋斗が最近付き合い悪くて……それで…」
取り乱している美和という女子の後ろからもう1人の女子が出てくる
「ごめんね秋斗くん…その、美和が最近秋斗くんの付き合いが悪いっていうから、相談聞いてみたら、その……広瀬さんがそそのかしてるんじゃないかって話になって……」
「はあ?!」
秋斗は大声をあげる。女子たちはそれにビクリ、と肩を弾かせた。女子は怯えながらも話を続ける
「み、皆で…広瀬さんと話をしに行こうってなってそしたら美和が挑発するもんだから…」そう女子が言う途中で秋斗は頭を抱える…。頭を抱えたまま秋斗は口を開く
「それで広瀬と美和が売り言葉に買い言葉…ヒートアップして美和が手を出したってことか……」全貌を理解した様子の秋斗は頭をぐしゃぐしゃとかくと私の方を向く
「ごめん、広瀬……
俺のせいだわ、これ。」
申し訳なさそうな顔で私を見つめてきた。そのまま沢口くんの方を向いて
「あおくんもごめんね、大事な彼女傷つけちゃって……」
そう言った。
「ち、ちが……秋斗は悪くなくて…」
美和は何かを言おうとしたが秋斗がそれを遮る。
「もういい。お前らこっち来い!」
呆れ顔の秋斗のあとを恐る恐る女子たちはついて行った。
「おい広瀬、大丈夫かよ。ここ、腫れてんぞ」康太は自分の頬を指さしながらそう言う。
「もう、最悪ですよ……」自分の頬を少し撫でると熱をもっていた。
「一体なにが……」沢口くんは心配そうにそう言う。
「分からないですよ…突然男好きだなんだって言ってきて、挙げ句の果てには私たちの関係をセックスフレンドだとかって」
呆れながら言うと沢口くんは顔を真っ赤にする「セッ……?!?!」そのまま固まってしまった。
「秋斗は女遊びは酷いとは聞いてたけどこんな過激な女たちと遊んでたんだな」
康太は乱れた私の髪の毛を優しく整えながらそう言う
「そうみたいですね……」
「それより、広瀬さん、保健室行こう?
頬の腫れ冷やそう?」
優しく沢口くんは私の頬に触れた。
「……氷だけもらってきます。1人で平気ですので、行ってきます」
「危ないよ!またさっきの人達みたいな人がいるかもだし!」
沢口くんは付いてこようとするが私は無言で視線を向け、彼を止めた。
沢口くんは渋々康太に連れられ教室へ向かっていく。私は反対方向へ足を運ばせた。
階段を下り、保健室に向かっていると怒鳴り声のようなものが聞こえる。
「私だってそんなつもりなかったよ!」
見ると踊り場で秋斗とあの女子たちが固まっていた。
「ごめんな、広瀬。」私に気づいた秋斗が話しかける。
「元はと言えば、俺が女の子との関係整理してなかったせいだし…こんな状態でなおちゃんに告白した俺が間違ってた」
と反省の弁をのべるが、それを聞いた美和という女子は顔色を変える
「こ、告白……?!なにそれ秋斗!!
そんなの聞いてない!!」
美和は秋斗の胸元を叩く
「言ってねえもん…。つか、言わなくて良かった。もしかしたらなおちゃんに被害がいってたってことだもんな」
そう言うと秋斗は美和を睨んだ。
「っ……だって、広瀬さんが挑発するから…」
美和はまた涙目になる
「だって、だってって、全部美和が最初に招いたことだろ。もう俺たち終わろうぜ。
いや、元からそのつもりだったけど」
そう言うと美和は秋斗の腕にしがみつく
「いや!!!いやだあ!!!
ねえ!何がダメだった???私、治すから!ね?お願い」
なりふり構わない美和の姿に私は哀れみの目を向けた。
「秋斗くん、今回のことは許してあげてよ」美和の友達のような女子たちは秋斗をなだめる。
「無理、俺ヒステリック女嫌いだから。」
秋斗はグイ、と美和の肩を押し美和を振り払うと、私の元に駆け寄る
「保健室まで送るわ。行こ、彼女ちゃん」
私の肩を優しく抱くとそのまま泣きじゃくる美和と女子たちのそばを素通りしていった。
「まったく……調子のいい時だけ彼女ちゃんって呼ぶのやめてください…いろいろ誤解を産みますし…広瀬でいいです」
そう言うと目を見開く秋斗
「……バレた?無意識にやってんなあ〜俺」
そのまま保健室に行き、氷を受け取って湿布だけ貰い授業に出たのだった。
体育の時、私は見学することにした。
授業が始まり、バレーを見ながら得点板の下で座っていると、北山なおが近づいてくる
「広瀬さ〜ん!お隣いいですかあー?」
柔らかい口調でそう言う。
「はい」
北山なおは私の目線に合わせかがむと、湿布の貼られた頬を見て驚く。
「広瀬さん?!どうしたの?そのほっぺ!!」
「ちょっと色々あって…」
秋斗の女の子とかの事は言わない方がいいよね…そう思うと目が横にそれ、怪しい表情になる。
「もお〜…友達なんだから言ってくれてもいいじゃん…」
北山なおはほっぺを膨らませ下を向いた
「コラコラ、なおってば、広瀬さんを困らせないの! 言いたくないことだってあるじゃない」
いつの間にか目の前には坂木茜が立っていた。
茜の言葉を聞いて北山なおはハッとした顔をする
「そ、そうだよね……広瀬さんにもいろいろあるもんね…ごめん」
「い、いえ…」
なんだか重苦しい空気だ。
「ほら、なお試合始まるよ」
坂木茜が北山なおの手を引く
「う、うん……またねっ広瀬さん!おだいじに!」
そう笑顔を見せると、北山なおはコートへと走っていった。
そして、あのことが頭によぎる。
北山なおは……沢口くんのことが……好き……。
重々しく、胸が痛く、気持ち悪く感じた。