今日は読書です。
本日はこちらの本。
『君が夏を走らせる』 瀬尾まいこ 新潮文庫
不良少年の大田はろくに高校もいかずなんの目標もなく過ごしていた。
夏休みのある日、不良仲間だった先輩から電話がかかってきた。
奥さんが切迫早産で入院しなければいけないので、出産までのひと月の間1歳10か月の娘の面倒をみてほしいと頼まれる。
先輩の家は奥さんも先輩も両親と疎遠になっていたのだ。
渋々引き受けたのはいいが、1歳10か月の鈴香はまだ言葉も片言のわけのわからない単語だけ。初日から大泣きする鈴香。とにかくなんとか泣き止ませようとするが効果なし。これがずっと続くのか?と途方にくれる太田だったが、鈴香がだんだん太田に慣れてきたようだ。
太田は絵本を読んであげたり、鈴香が喜んで食べるような離乳食を作ってあげたり、最初はビビってたおむつ替えもなんなくこなすようになり。鈴香との生活が楽しくなってくる。
鈴香を外で遊ばせたいと公園にも連れて行ったが、金髪で強面なので心配していたが、周りのお母さんたちはすんなり太田を仲間にいれてくれた。
太田は鈴香との日常を楽しむようになっていたが、日にちは瞬く間にすぎ、鈴香とのお別れの時が近づいてきた。その日が近づくたびに太田は複雑な思いに悩まされる。
たった一か月だけのバイト。なのに赤ちゃんの鈴香の成長は凄まじかった。
そして最後の日がやってきて・・・。
以前、瀬尾まいこさんの『あと少し、もう少し』という寄せ集めメンバーで駅伝を
走る作品を読んだが、そこで2区を走る不良少年の大田が今回の主人公
でした。
途中まで気が付かなかったよ。。。(笑)
私は、『あと少し、もう少し』で評価★5をつけたと思ったが、今回の作品も
大変良かった。
小学時代に分数がわからなくて落ちこぼれと思い込みそこから不良少年の
道を歩み始めた太田だが、実は根は真面目(笑)
言葉の通じない鈴香相手にどんなに意志の疎通がうまくいかなくても
決して怒ることもなく投げ出すこともなく、根気強く鈴香と向き合っている。
最初は大好きなお母さんがいなくなって泣いてばかりだった鈴香も
太田にどんどん懐いていく。そうなると太田も鈴香がかわいくて仕方がない。
この作品は太田の子育て奮闘記みたいなものである。
評価は★5。
金髪の眉なし不良少年を侮っちゃいけませんよ(笑)
本当に、楽しく読める作品だと思います。
鈴香を楽しませるためにあれやこれやと奮闘する太田は間違いなく
優しい好青年です。
そして、鈴香を連れて行った公園に偶然中学時代の駅伝部員と顧問の上原が
きていた。もうすぐ太田も中学時代走った駅伝大会があるらしい。
太田は走るのだけは得意だったし、今でもそれは衰えていない。
現役の中学生と、3000メートルトライアルをしたときは太田頑張れ!と
思わず応援してしまった。そして顧問の上原の言葉がまたいい。
1か月のバイトで鈴香は驚くほど成長したが、同時に太田もまた鈴香によって
成長させられていた。
とても心温まる作品であると思う。
危険なことやアクシデントなどが起きないので安心して読める作品だと思います。