今日は読書です。

 

本日はこちらの本。

 

 

『テミスの剣』 中山七里 文春文庫

 

豪雨の夜、不動産屋を経営する夫婦が殺された。強盗殺人だった。

渡瀬の教育係兼相棒は年配刑事で検挙率ナンバーワンの鳴海だった。

捜査一課に手柄を持っていかれたくなかった鳴海はやっと見つけた容疑者の楠木明広という若者を引っ張ってくる。鳴海の恐喝じみた取り調べと若い渡瀬の甘い言葉での誘導で連日の取り調べで疲弊していた明広は自白する。

決め手となったのは明広の部屋から押収された血の付いたジャンパーだった。

決定的な証拠があったため検察は起訴、しかし裁判で明広は一貫して無罪を訴え続けた。しかしそれが一層心証を悪くして最高裁でくだされた判決は死刑。

明広は獄中で首を吊って自殺した。

数年後、空き巣が入った、続けて強盗殺人が起きた。殺人の現場を見た渡瀬は不動産屋夫婦の事件と似ていると思った。

二つの事件の犯人は間もなく逮捕された。迫水という男だった。迫水は証拠を突き付けられると観念して罪を認めた。そして渡瀬は心に引っかかっていた疑問を迫水に投げかける。なんと迫水は不動産屋夫婦の事件の犯人でもあったのだ。

冤罪事件が発覚し渡瀬は黙っていることができず内部告発をする。しかし、警察内部の徹底した隠蔽で警察上層部も同僚さえも渡瀬に圧力をかける。

あの時明広が犯人になった証拠品の血の付いたジャンパーは実は鳴海が後から用意した証拠品だったことも鳴海本人から聞き、渡瀬は衝撃を受ける。

そんな渡瀬がある日何者かに襲われる。犯人は渡瀬が持っている何かを探しているようだった。明らかに警察関係者であった。

渡瀬が襲われた翌日、各新聞は警察の冤罪事件と隠蔽をこぞって取り上げた。

渡瀬の唯一の味方であった検察官の恩田が隠蔽の証拠を新聞社にリークしたのだ。

明広の冤罪に関わった警察官、検察官、裁判官はすべて処分された。

渡瀬だけが刑事として生き残ることができた。

そして20年以上が経ち、無期懲役の判決を受けた迫水が模範囚として出所してきた。しかし迫水は出所したその日に何者かに殺害される。

渡瀬は管轄を無視し捜査をはじめる。渡瀬にとって冤罪事件はまだ終っていなかったのだ。上から圧力がかかる中、捜査を続ける渡瀬がつかんだ真実とは?

 

あらすじやたら長くてすいません(笑)

 

中山七里さんの作品の中でも5本指に入るぐらい面白かったです。

 

いろんなシリーズにでてくる渡瀬の若い頃のお話ですね。

 

冤罪という重いテーマで、序盤は明広への壮絶な取り調べで本当に

 

苦しくなりますし、明広の無念を考えると胸が痛みました。

 

冤罪が発覚したあと、関わっていた関係者はすべて処分されたが、

 

明広を恫喝して偽の証拠まで作って犯人に仕立てた鳴海は既に定年して

 

なんのお咎めもなし。納得いかないですよね。

 

渡瀬も鳴海と取り調べに関わっていたので同罪だが、鳴海が証拠を偽装したこと

 

を知らなかったこと、内部告発しようとしてたことで、恩田が味方についてくれた

 

おかげで処分はなかった。

 

渡瀬は同じ過ちは二度としないと深く誓う。

 

そして迫水の殺人事件が起きる。動機を持っている者は明広の両親、

 

不動産夫婦の娘、妻と子を殺された夫など何人かいる。

 

管轄警察も渡瀬もその人物らから事情を聞いていく。

 

管轄外の渡瀬には圧力がかかり、謹慎をいいわたされるが、渡瀬は

 

捜査を辞めなかった。そしてたどり着いた真実とは・・・。

 

評価は★5.

 

冤罪事件とは起こるものでなくて作られるものなんだと

 

感じた一冊でした。

 

鳴海が鬼畜すぎる。

 

最高裁で死刑の判決を下した女性裁判官は最後まで判決に悩んでいたが、

 

地裁で死刑を言い渡した裁判官が先輩だったため、判断が鈍ってしまったと

 

言える。

 

先日も何かの本で警察が嫌な奴ばかりだったと感想を書いたが、

 

この作品に出てくる警察関係者もクズばかりである。

 

警察組織ってこんなに腐ってるのか?リアル警察はどうなのか?

 

と疑いたくなる。

 

冤罪事件ということで、多分感情移入しながら読む方が多いと思う。

 

それぐらい緊迫した描写に中山七里さんの表現する力が

 

素晴らしすぎると実感できます。

 

中山七里さんの作品も私が今まで読んできたものほとんど

 

ハズレがなかったと思いますが、この作品は本当にお勧めです。

 

読むのが辛いですけどページが進む作品でお勧めです。