乾く涙

 

ある日一人の人が命を落とした

未来ある人の非業の死に私は涙した

 

次の日 地球の裏で戦争が起こった

止まぬ悲劇の連鎖に私は涙した

 

その翌日は特に何もなかった

そういえば何かあったかと記憶をたどり

昨日流れた血の雨と

一昨日消えた命を思い出した

「ああ それはそんな最近のことだったのか」と

そう思ってからふと考える

 

なぜもうはや忘れていたのか

なぜすぐに思い出せなかったのか

 

どれほど心を痛めようと

どれほど涙を流そうと

いつの間にか悲劇を忘れてしまう

 

「そんなこともあったっけ」

そんな程度に霞んでしまう

 

日常に溶けつつある悲劇に

明日になれば乾く涙に

私はひたすら涙した

 

 

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   日々ニュースで流れてくる悲しい出来事。 その時、ニュースを見聞きして、

  私は胸を痛めますが、日常の暮らしの中で、ややもすると忘れてしまいます。

  決して忘れてはいけない胸に留めておくべきことも、日々の忙しさの中で

  薄れていくのです。亡くなった人や辛い思いをしている人に思いを馳せる

  ことのできる人間でありたい、と思います。