ある蝉のことば

 

おーい、そこのアンタ

こっちだ

違う、後ろじゃない、上だ 

そう その木の真ん中へんだよ

 

よぅ オレは蝉

五年間暗がりにいて

六日前に太陽を見た

 

ここで会ったのも何かの縁だ

ちょっと愚痴でも聞いてってくれや

 

この木とは馴染み深くてな

五年間この木の根っこの下にいた

地上に出てからもずっとここだ

 

なんとか子孫を残そうと

結構前から鳴いてはいるが

残念ながら思わしくない

 

オレの寿命もあとわずか

もって二日というとこか

六日も何をしてたのか

思い返せば鳴くばかり

 

こんなことになるならば

もう少し遊べばよかったか

 

死んだと見せかけ暴れてみたり

虫取り小僧に小便ひっかけ

自転車乗りに体当たり

仲間は結構そうしてた

 

オレはといえば

そんなことなどくだらない

鳴いて子孫を残すが華よと

無我夢中で鳴き散らかした

結果は惨敗ご覧の通り

残りわずかな命さえも

実りもしない恋に捧げて

あっという間に棒に振る

 

もういいか

鳴かなくったって

もういいや

遊んじまっても

残り二日の命だし

好きに使っても悪くはないや

 

まず手始めに

ちょっとそこいらひとっ飛び

これから忙しくなりそうだ

 

アンタも 

あとどれだけ生きるか知らないが

残りの人生自由に使え

 

じゃ、あばよ

 

※※※※※※※※※※

 

  蝉の命が地上に出てからとても短いことを思い、

  この詩を書きました。

  お読みいただき、ありがとうございました。