妊娠が発覚して、それを周囲に報告した時に大体最初にかけられる言葉は「無理しないでね」かと思います。大変ありがたいことなのですが、私は職業柄そう言われても「医学的にどのように無理してはいけないのか」を知りたくなりました。

 

そこで調べましたが、産婦人科の教科書には「何キロの物を持ってはいけない」などの記載はありません。

そもそも安静の定義は医学的には決まっていないことがほとんど。

「腹部大動脈瘤」という病気をご存知ですか?簡単に説明するとお腹の動脈が高血圧などを原因に瘤のように膨らみ、大きくなりすぎると破裂するという怖い病気なのですが。

これも病状によって「なるべく腹圧をかけないように」と医師から説明することがあります。これについても「重いものをもったり、急にいきんだりしないでくださいね」と噛み砕いてお伝えしますが、「○キロ以上の物は持たない様にしてくださいね」とは言えないのが申し訳ないところです。

体力筋力には個人差もあるので仕方ないと言えばそうなのですが…。

 

という訳で、切迫早産などで安静を指示されていない限り「無理しない」というのは個人差がありますが、

・急激に体に負荷がかかること(筋トレも含みます)を避ける

・一般的に重いと言われるものを持つことは出来るだけ避ける

・立ちっぱなしは避ける

・辛いと思ったら休む(体の訴えに正直に従う)

 

以上のようなことに気をつけつつ、自分の体と折り合いをつけていくのが良いのかなと思います。

ちなみに私は幸い悪阻も軽かったので、妊娠初期は手術・当直含めて働いておりましたが、先輩で出産経験のある女医さんに「夜に患者さんが急変しても心臓マッサージ出来ないでしょ?あなたの代わりがいない体制の勤務は減らしていった方が良いと思うよ」と言われてハッとしまして。翌月から職場と相談して、当直をお休みさせて頂くことにしました。手術も座っていないと辛い時があるのに加えて、体調が安定しない医者に執刀されるのは、患者さんにとってはたまったものではないだろうと考えセーブしております。

 

今回は以上です。今回も記載したことは医師の私個人としての見解もありますので必ずご自身の主治医の先生と認識をすり合わせてくださいね。