真っ黒に覆われた星ひとつない漆黒の闇

雨や雷や嵐や台風の日はあそこに逃げる


こげ茶色の洞窟


中に入るとそこは水色の空と真っ白い雲

エメラルドグリーンの湖がある世界


どんどん歩いていくとポツンとある小さな小屋

そこにはとってもとっても仲睦まじい夫婦が住んでいる

(この夫婦は確かウサギと野ねずみを足して2で割った感じ!)


花柄の小さなコップと水玉の小さなお皿

甘いジュースや焼き立てのクッキーをのせてくれる


お腹がいっぱいになったら、やっと安心したらその後は

夫婦2人の間に入れてもらって身体を寄せ合って眠る


これでもう寂しいことや悲しいことはひとつもない


どんなに寒くて凍えても

どんなに怖くて震えても

ここに隠れていたら大丈夫


ずっとずっとここにいたいけど

そんなに長くは居られない

目が覚めて朝がきたら帰らないといけない


ありがとう

また来るね





子供のころに感じた不安や孤独

そんなときはいつもここに来てたんだってことを思い出した

怖くて泣きながら、声を押し殺して隠れたベッドの中の空想

何もかも塞いで、なんにも聞こえないようにしたんだ


幾十にも重なる透明の輪

浅かったはずの水の中

みるみるうちに緑色に濁っていく

あっという間に足がすくわれる


必死でもがいてもがいて戦って

やっとの思いで勝った!と思ったら


どんどん深く沈んでゆく

どんどん重く沈んでゆく


遠のく意識の中で安堵の溜息


気づいたそこはどうやら深い海の底

誰の声も届かない静寂の底

月の光も届かない暗闇の底


ああ、もうこれで誰に見つかることもない


ずっと来たいと思っていた場所

本当は来たくはなかったのかもしれない場所





通勤電車の中で聞くショパン


どうしようもなく滑稽に見える人々


けれどもすばらしくいとおしい人々