過去の出来事が、非常に印象的で、
過ぎ去ったあとで、何度も繰り返し思い出して楽しめる
そんな思い出は、それほど多くないだろう。
味に敏感で豊富な体験を持っている人は、
食べ物についての思い出も沢山あるだろう。
それぞれの分野で、体験の内容は違うが、
その分野に詳しい人なら、独特の感性があり、
思い出もいっぱい。
そんな思い出は、それほど沢山は作れない。
人生は短く、経験できることは限られている。
思い出は豊かだけど、後世に残せないものも多い。
その人固有で、その人にしかできない体験などが、
それにあたる。
人が生きているというのは、意識があるから。
意識という実感があるから。
意識はその人固有で、他の人には伝えられない。
当人が死ねば、すべてが失われる。
歴史上の記録や痕跡も、伝える内容は限られている。
一番大事な、意識にあたる固有の体験は伝えられない。
たとえ、日記や記録で文字として残しても、
文字情報が伝える内容は、非常に狭く貧しい。
後世に業績を残したいという人は多い。
本人が何事かを成し遂げたという自負を持っている人だ。
私は何も残したくない。
自分が成しえたことを誇りに思っていない。
そのときは一生懸命であっても、
あとから振り返れば、何という無駄な。
そう思うことが多い。
愚かだった自分を恥ずかしく思う。
できるなら、過去の情報を全て消したいくらい。
すべて消して、すっきりして死にたい。
しかし、天使の存在だけは、私の誇り。