スマホに顔写真が入っていた。
名前は一瞥できただけ。
顔写真は病の重い高齢女性。
たぶん、彼女だろうと思った。
しかし、写真は二度と見られない。
たぶん、消したのだろう。
死を意識し始めると、人は
親しかった人たちに最後の挨拶をする。
人生の終わりにあたり、締めのくぎり。
私の場合、
知人への挨拶をだいたい終えた。
残っているのは、近所の知人と親戚だけ。
写真の彼女もお別れの挨拶だろうと思う。
同級で特別に親しいわけではないが、
彼女にとって私は若い頃のあこがれのひと。
小学高学年から高校くらいまでの話だが。
私は彼女と付き合うこともなかった。
私のタイプではなかったからだが。
後年、同窓会で幾度も親しくした。
たぶん、死ぬ前の最後の挨拶をラインでしたのではないかと。
自分の写真を撮ってもらい、ラインで送ったのだろう。
そして、すぐに消した。
こういう別れ方もあるのかと思う。