近所の空き地

少し前まで家があった

 

時間をさかのぼれば

朝、子どもたちが出てくる

小学生、中学生、高校生

にぎやかな家族だ

 

どの家にも歴史がある

物語りがある

記録には残らない

大半は忘れられしまう

 

家は輝いていた

今、残ってないが

平らにならされ

草も生えていない

 

家があったとき

雑草は取ってもとっても生える

晴れた日は洗濯で満載

万国旗で飾られた豪華客船のよう

 

今、その場所は

静かに眠っている

永遠の休息に入ったように

 

家があったという記憶は

どこにあるだろう

友人の彫刻作品も

この家に似ている

 

作者が生きているとき

作品は輝いている

死後はどうなるのだろう

 

88歳で亡くなった画家がいる

残された作品が美術館となった

見学に訪れる人もいる

 

作品は残るけど

中身は変わってしまった

 

人生を作品とするなら

死とともに中身も消えていく

 

知り合いに献身的なボランティアがいた

引き受ける人がいないことを真面目にやる人

60代で病に倒れた

10年前になる

今では思い出す人もまばら

 

私の知り合いに

一つのことを生涯取り組む人がいる

死刑廃止

シモーニュ・ベイユ

労働運動

いずれも果てなき目標

死後に何が残るのだろう

整地された住居跡のようになるのだろうか