1982年3月出版の詩集「あいとゆめ」から
青春
雨に濡れながら歩く夜の国道
大型トラックのヘッドライト
まぶしくて足元を見失う
泥水を浴び
危険にさらされ
人恋しさに町明かりを目指して
青春
捨てられた日記
数ページで中断したまま
青春
読まないで古本屋に売る新品の本
コーヒー一杯のために
青春
言葉を忘れた詩人
照明の消えたホールに独り
生き難さを抱えたままで
青春
華やかな街角で
行き交う人々を眺める
美しい女性たち
数秒だけの恋
青春
親友の死を電話で知る
非日常性に浮つき
無感動で見る遺骨
青春
君は今も
あの赤いレインコートを着て
唐湊行きのバスに乗っているのだろうか