私の40代、50代の20年間は、
人権活動(アムネスティなど)と
ボランティア(精神障害者の個別支援など)が中心だった。
ある日、
お金がなくて困っているという男性A(40歳くらい)への支援。
私も経済的にゆとりのある生活ではないので、
そう繰り返しカンパはできない。
すでにAに対しては、何度かカンパしていた。
合計で10万くらいの金額だが。
今回はカンパではなく、お金をつくる方策を考えた。
生活に困っているのでお金を寄付して欲しいという文面の
チラシをつくり、
家を軒並み戸別訪問して歩いた。
責任者は私の名前で、Aのことを訴える内容のチラシを渡しながら、
説明して歩く。
要するに、物乞いだが。
30軒くらい回り、
千円少々の寄付をもらった。
回った家の中では、
私の職場へ電話して、どうしてこんなことをしているのかと、
尋ねた人もいた。
(チラシの責任者として、名前や団体や勤務先も記載していたので)
Aにとって、物乞いは初めて。
おじおじして、私の背中に隠れていた。
お前のためにやっているのだから、もっと協力的しろよ、と
言いたかったが、Aの態度は不変。
性格はそう簡単に変わらない。
人に頭を下げるような人間ではない。
だから、仕事も長続きしない。
2時間くらい、物乞いしていると
相当にくたびれる。
私の支援する人たちは、だいたいお金がない。
生保ぎりぎり、
時に生保の申請にも同行。
お金に困ったら、一緒に駅前に立って物乞いしようと、
常々思っていた。
今回、ようやく、実現。
社会福祉協議会へ申請すれば、
一時金として5千円は、保証人なしで支給されると知ったのは、
民生委員になってからなので、その頃は知らなかった。
(ただし、一回だけ、今は金額も増えている)
物乞いでは期待する程のお金が手に入らなかったので、
Aを連れて、Aの親族のところに行った。
親族と言っても遠い親戚で老人ホームに入居。
(Aは親族に迷惑ばかりかけている)
80過ぎの女性の部屋を尋ねる。
やっと、2万円もらえた。
これで、何とかしのげる。
Aとの付き合いは、お金にまつわる問題が多い。
私の実家にも大迷惑をかけている。
私が知らない間に尋ねていた。
物乞いするのは、
覚悟のいる商売だと実感した体験。