人も誰も、長く生きていれば、奇跡の一つや二つ
中には数百ある人も
私も沢山の奇跡をもらった
その一つ
車の免許を取り、数週間後のこと
私は26歳
長距離の運転は初めて
彼女(今の妻)を載せて、夜9時頃出発した
行き先も決めずに
家に戻れなかった
いろいろと事情があった
行く先の当てはない
明日は日曜
どこかで安宿に泊まろうと
中国山脈を山陰へ向けて走った
国道だけど、夜間は車が少ない
山中を走る、急にフロントガラスが曇ってきた
霧の中に突入したと思った
1メートル先も見えない
何も見えない
それでも走った
トラックの後に
くっつくように走る
テールランプだけが
視界の中で
唯一見えるもの
道路のはしも見えない
トラックに
ぴったりくっついて
走る
1時間くらい、
そうしていた
今考えれば
窓を開ければよかった
室内湿度が飽和して
窓が曇ったのだ
しかし、
そのときは気付かない
車に乗り始めたばかりで
無知だった
よくもまあ
事故も起こさず
まるで
目をつむって
運転しているようなもの
思い出して
よく無事だったと思う
これも、
奇跡の一つ