吃音者が声を出そうとするとき、
声が出るタイミングをコントロールできないので、
声はいつ出るか分からない。
運に任せるしかない。
円滑に出るときもある。
焦って努力して、
発声を待っても、
結局出なくて、諦めるときもある。
しかし、どうしても言わなくてはいけないとき。
無理して気張る、いきむ、しかない。
顔の表情や身振り手振りで
ごまかすしかない。
相手がちょっとでも気配を分かってくれれば、
言葉が出やすくなる。
吃音者がものを言う、とは
故障した発声機械を使っているに似ている。
言葉を出そうとしても、
いつ出てくるか、分からない、予測できない、
気まぐれな機械だ。
しかし、これしかないので、
使い続けるしかない。
今日はうまくいっても、
明日もうまくいくとは限らない。
ごまかし、ごまかし、なだめすかして
機械を操作するしかない。
発声には、
サーカスのような緊張がある。
いつ落っこちるか分からない。
また、予測不能感が強いと、
カジノでルーレットしているような
緊張もある。
吃音者は、
まるで、びくびくおびえている。
犯罪者が悪事がばれないように、
いつも、緊張しているように。
吃音者は、
自分のこころや内面と
向き合わざるをえない。
自分の内面が、どんなに
声帯や腹筋を緊張させて、
焦りまくって、雨や嵐に翻弄されていようと、
外に漏れることはない。
少しどもったくらいでは、普通、
人は気にしたりしない。
内面と外部の、
この断絶。
助けを求めるには、
もっと明確なしるしがいる。
それがないのだ。
つづく