発病後入院中のある時、
娘はしゃっくりを始めた。
まるで生まれて初めて経験する
しゃっくりのような
娘の反応だった。
自分の身体に、
何が起こったのか分からず、
とまどい驚き、あわてふためく。
そんなあり様。
多分、しゃっくりをした記憶が、
消えてしまったのだろう。
その頃は、
「こちょこちょしよう」と言って、
娘の脇などをくすぐっても、
全く反応がなかった。
自宅に帰り、表情が戻り、
声や笑いが出始め、
「こちょこちょしよう」と手を出せば、
「やめて」と言うようになった。
最近では、かなり大きな声で、
「やめて」を発する。
ここ数か月、右足が痛い時、
表情も硬く、声も出なくなるとき。
「こちょこちょしよう」と声をかけると、
娘の痛みが、どの程度なのかが、
センサーのように
感じとれる。
大声で反応すれば、
痛みもそれほどでもないな、
という具合に。
娘の場合、
語彙がとても少ない。
私がある言葉を発すると、
これに対する返答が、
ほぼ決まっている。
例えば、「どうかね」と問えば、
「ぼちぼちね」。
これで、娘の状態が
だいたい分かる。
つづく