7月のとある平日の午後、
損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の吉田博展を鑑賞した後、
新宿から丸ノ内線に乗って、すいっと東京駅へ。
丸の内の地下道を通って、三菱一号館美術館の地下入り口に到着。(写真上)
暑い日に炎天下を歩かなくてすむことは、ありがたいです。
地下道の柱には、本展覧会のポスターが掲示されていました。
15世紀のイタリア。
画家としての才能以外にも、建築、科学、解剖学の分野にも関心を広げ、「万能人」と呼ばれたレオナルド・ダ・ヴィンチ。
「神のごとき」と称された天才彫刻家ミケランジェロ・ブオナローティ。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、ミケランジェロ・ブオナローティよりも23歳年上。
フィレンツェのヴェッキオ宮殿の壁画における競作などから、お互いを強く意識していました。
2人の天才の素描を中心とする作品を、テーマに沿って対比することができる展覧会です。
芸術家の力量を示す上で最も重要とされ、全ての創造の源である素描。
本格的な制作に至る前の、さまざまな着想や構想が展開されている素描にこそ、傑作誕生の萌芽を見ることができ、巨匠の息づかいを感じ取ることができます。
撮影可能コーナーでは、イタリアが生んだ最も美しいとされる素描の2つの作品が拡大され、見比べることができます。
レオナルド作《少女の頭部/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》 1483‐1485年頃 素描
世界一美しい素描とされた作品。
ルーブル美術館所蔵の《岩窟の聖母》の右側の天使のための習作とされています。
振り返る女性の美しさ。
こちらを見つめる女性は神秘的な微笑みを湛えています。
左利きのレオナルドは、右下へと向かうハッチングで描いているのが特徴です。
ミケランジェロ作《〈レダと白鳥〉の頭部のための習作》 1530年頃 素描
こちらは、現在は失われてしまった作品《レダと白鳥》の頭部のための習作です。
ミケランジェロの素描の中でも、もっとも美しくて重要な作品の1つとされています。
弟子のアントニオ・ミー二がモデルといわれています。当時は、女性像を描くためにしばしば男性モデルが採用されていましたが、この作品のモデルも男性です。
左下の2つ目の素描では、長いまつげが強調され、より女性らしく描写されています。
ミケランジェロの素描は、昨年開催されたミケランジェロ展でたくさん観ることができました。男性をモデルとした素描も見られました。
昨年、福山市で開催されたミケランジェロ展についての記事はこちらです。 →
福山市市政施行100周年及び日伊国交樹立150周年記念ミケランジェロ展(ふくやま美術館)
7月11日から公開のミケランジェロの大型大理石像も撮影可能でした。
ミケランジェロ・作 《十字架を持つキリスト(ジュスティニアーニのキリスト)》 1514-1516年頃 大理石 (未完作品、17世紀の彫刻家の手で完成)
注文を受けて制作を始めたものの、顔の部分に縦に大きく走る黒いキズが現れたために、制作途中で放棄されてしまっていた作品。17世紀の彫刻家によって完成されました。
どの程度までミケランジェロによって彫られていたのか、非常に興味があります。アカデミア美術館の聖マタイ像と同程度という証言の記録が残っているようですので、かなりラフな状態だったことが想像できます。
この作品は、現在、イタリア、バッサーノ・ロマーノにあるサン・ヴィンチェンツォ修道院付属聖堂が所蔵しています。
イギリス・ロンドンのナショナル・ギャラリーの企画展で展示された後、日本に移送し、「レオナルド×ミケランジェロ展」会期途中から展示公開されています。
日本国内で、これほどまでに大型のミケランジェロの手による大理石彫刻を展示するのは初めてのことだそうです。
(なお、本作は近年ミケランジェロの作品として認定されました。)
いずれにしても、この展覧会の見どころの1つです。
7月11日(火)から9月24日(日)まで公開されています。
この他にも、レオナルドの解剖学に基づく素描や、顔と目の比率の研究、人体、鳥の翼、昆虫、戦車や馬などの素描や、ミケランジェロの彫像《河神》など、興味深い作品が多かったです。
三菱1号館美術館に来たならば、綺麗なお庭を楽しみたいので、帰りは1階の入り口から屋外へ出てみました。
8/15〜8/18までの4日間、美術館の夜間特別開館(20:00まで)と、一号館広場の夜間ライトアップが行われるそうです。
真夏の夜のお庭のライトアップ、
ロマンティックですね。