『ロストケア』2013年に刊行された、介護をきっかけとする連続殺人を題材にしたミステリー小説が、映画化されました。社会問題を取り扱ったヒューマンドラマ映画で評価がとても高いので早速劇場で観てきました。
いつも行くTOHOシネマズ渋谷では上映されていないのでTOHOシネマズ新宿に行ってきました。
予告
あらすじ
引用:ロストケア公式
早朝の民家で老人と訪問介護センターの所長の死体が発見された。捜査線上に浮かんだのは、センターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)。だが、彼は介護家族に慕われる献身的な介護士だった。検事の大友秀美(長澤まさみ)は、斯波が勤めるその訪問介護センターが世話している老人の死亡率が異常に高く、彼が働き始めてからの自宅での死者が40人を超えることを突き止めた。
真実を明らかにするため、斯波と対峙する大友。すると斯波は、自分がしたことは『殺人』ではなく、『救い』だと主張した。その告白に戸惑う大友。彼は何故多くの老人を殺めたのか?そして彼が言う『救い』の真意とは何なのか?
被害者の家族を調査するうちに、社会的なサポートでは賄いきれない、介護家族の厳しい現実を知る大友。そして彼女は、法の正義のもと斯波の信念と向き合っていく。
感想
この映画は、家族介護に焦点を当て、子供が親を介護する中で抱える問題や苦悩を描いた作品となっています。
映画では風呂・食事・排泄・掃除など、介護に関わるリアルなシーンが描かれていました。子育てを経験している身としては「育児」と「介護」は共通する部分はあります。子供をお風呂に入れたり、ご飯を食べさせるのも一苦労ではありますが、子供が育つ未来に対して希望を感じることができます。ただ、介護には希望を見出すことは難しい。そのような希望を見出せない状況に陥る可能性があり、介護レベルによっては絶望的な状況に陥る可能性がある日本の社会問題を取り扱う映画となっていました。
絶望的な経験をした斯波。40人を超える人々を殺害したにも関わらず「殺人」ではなく「救い」と主張する松山ケンイチさん演じる斯波。彼が長澤まさみさん演じる検事に取り調べされるシーンでは斯波の主張に正義があるのでは?と思わされます。それほど過酷な介護とそれが招く社会からの孤立がとてもよく表現されていました。
映画を通して、自分が将来同じ状況に陥る可能性があること。どうすれば最善な道を選ぶことができるのか。という難しい問いに向き合わざるを得ないことが伝えられています。
また、涙を滲ませながらも斯波自身の正義を訴える松山ケンイチさんの演技にどんどん引き込まれていきます。役が乗り移っているかのようなすごい役者さんですね。
そして、斯波の父親役として演じられた柄本明さん。寝たきりになりながらも息子である斯波を慈しむ姿が描かれています。親子の絆が感じられ、涙が止まらなくなる感動的な映画でした。
作品情報
【公開】
2023年3月24日
【監督】
前田哲
【キャスト】
斯波宗典(松山ケンイチ)
大友秀美(長澤まさみ)
斯波正作(柄本明)