ある支援者の方が物語を書いてくれました。
ドンちゃんが大好きでドンちゃんの気持ちになって書かれたそうです。
是非、読んで下さい。



【ぼく、ドンちゃん】
僕の名前はドン。
大好きな木村さんがそう呼び始めたらみんながそう呼ぶようになった。
天使の様なひまわりちゃんは【白きち君】と僕に話しかける。
この前、ご飯を必死で食べていたら何度も【白きち君可愛いね!】と言うから僕はスッと顔をあげて【何回言うん?】と聞き返した。
ご飯粒が口からこぼれた。
僕にはそんなクールな一面があるんだ。
だけど、みんなは僕の事をひょうきん者だと思ってる。

僕は仲間達に比べたら小柄だ。
僕を見た人達は【きゃ~ドンちゃん、ちっちゃ~い】と黄色い声をあげる。
特に女性陣には大人気だ。
言わせてもらえば、ちっちゃいんじゃない筋肉質と言ってほしい。
僕はきっと跳び箱三段くらい難なく跳べる。
両手をついて空中で一回転して、そして着地。時にはこけて…お約束だ。

僕が走ってる姿は【欽ちゃん走り】らしい。
自分では分からないけれど。
これも僕が人気者である理由の一つらしい。
そして僕は期待を裏切らないと。

僕にはポンちゃんという大の仲良しの友達がいる。
気まぐれな僕は時々ポンちゃんを置いてあちこちに出かけてしまう。
そんな僕をポンちゃんはいつも待っていてくれる。
だから、ある日突然ポンちゃんが居なくなった時僕は必死でポンちゃんを探したんだ。
朝も昼も夜も雨の日だって…
ご飯食べるのも忘れて必死で探した。
【ポンちゃん!ポンちゃん‼】て何度も叫んだ。
きっと帰って来る。きっと帰って来る。
そんな日が何日も続いた。
でも僕は諦めなかった。
季節が変わろうとしていたある日、いつも行く墓地の所で偶然ポンちゃんと再会した。
【どこに行っていたのポンちゃん!】
僕は欽ちゃん走りで全力疾走でポンちゃんに駆け寄った。
ポンちゃんも僕に気付いて向こうから走ってきた。
【ごめんね、ごめんね】
ポンちゃんは随分痩せていた。
僕も心配で頬がこけてしまった。
僕もポンちゃんもどうして離ればなれになってしまったのか分からなかった。
ただ、また会えた事が嬉しい。
一緒にご飯を食べて遊んで、一緒にお昼寝したり走ったり。
またいつもの毎日に戻ったね。
そんな僕らを見て木村さんは【アホコンビ】と呼ぶんだ。
【アホ】って何だろう?まっ、いいか。

僕は緑地公園のアイドルだ。相棒のポンちゃんの方がハンサムだしスタイルも良いけれど。
僕は絶対的アイドルっていうのかな。
ヒツジという白い体の大きな子も人気者だけど、絶対王者の座は譲らない!

僕を産んでくれたのはホワイト母さん。
ある日、お母さんは僕一人だけ兄弟とは別の場所に連れていった。
そして僕は一人ぼっちになってしまった。
後から教えてもらったのだけれど、お母さんと僕の兄弟達は人間に捕まって連れて行かれたんだと。
突然の事で僕は寂しさと悲しさと空腹で気を失いそうになった。
そんな一人ぼっちの僕を見て優しいおばさんが僕を家族に迎えてくれた。
おばさんは子育て中で僕にチョビという兄弟ができた。嬉しかった。
チョビお兄ちゃんは僕とたくさん遊んでくれた。
でもそんな楽しい日々は束の間。
僕を育ててくれたお母さんもチョビの兄弟達もまた突然居なくなってしまった。
【人間に連れて行かれたんだ】
僕はまた目の前が真っ暗になった。
悲しくて、悲しくて…
寂しくて、寂しくて…
お母さんどこ?おばさんどこ?お兄ちゃんどこ?
星が綺麗な夜は、短い首を精一杯伸ばして空に届くようにお祈りした。
一人は寂しい、友達がほしい。

ポンちゃんとは何だか馬が合う。
ポンちゃんには家族の話を聞いた事がない。
きっと僕と同じように悲しい過去があるんだろう。
ポンちゃんの優しい瞳の奥には悲しみがみえる。
緑地公園の仲間達はみんな悲しい目をしている。
僕には僕の目が見れないけど、大好きな木村さんの目に映った僕の目を見たらみんなと同じ悲しい目をしてた。

人間は僕達の涙を見たことがないらしい。
僕達も涙を流す事を知らないらしい。

お母さんが僕を必死で産んで育ててくれた事も、危険を察知して僕を安全な場所に隠してくれた事も。
知らないおばさんが僕を子供達と一緒に分け隔てなく育ててくれた事も。
僕に優しく接してくれたお兄ちゃんがいた事も。
無二の親友ができた事も。

昨日までは公園の木や草むらが僕達を雨や風、寒さ暑さから守ってくれた。
僕も仲間達も木々の間で身を寄せあい、ひっそりと暮らしていた。
でもね、僕達を追い出すために人間達が樹をどんどん切ってしまったんだ。
今年の夏は特に暑かった。
いつもより喉が渇いた。

今年の冬はきっと寒いだろうな。
チョビ兄ちゃん元気かなぁ…
チョビ兄ちゃんは僕より少しフワフワの毛。
寒くなるとチョビ兄ちゃんの毛が羨ましかった。

でも、僕にはポンちゃんがいる。
一生の友達、ステキな相棒。

そして大好きな木村さんがいる。
天使の様なひまわりちゃんがいる。
優しくしてくれる人間もいる。

野犬?
人間が僕達をひとくくりにしてそう呼ぶ…
僕はドンです。
今を生きています。人間と同じようにお母さんから産まれ兄弟や仲間の愛情を知りました。
お腹も空くし喉も渇く、叩かれたら痛いし、怪我をしたら血も流れます。
嬉しい、悲しい、怖い、感受性豊かです。

僕も仲間も一瞬一瞬を生きています。
今日も欽ちゃん走りで、明日に向かって走ってます。

野犬?
いいえ、僕は【ドン】です。