- 償い/矢口 敦子
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人の心を殺しても、罰せられないのですか?
絶望を抱えて生きるホームレスと、15歳の「殺人鬼」。
ふたりの魂が救済されるときは来るのか――。
感動のミステリ長篇。
「あの人は死んでよかったんだと思うよ」
私が救った子供は、15歳の殺人鬼に成長していた?
36歳の日高は子供の病死と妻の自殺で絶望し、
エリート医師からホームレスになった。
流れ着いた東京のベッド・タウン光市で、高齢者、障害者など
社会的弱者ばかりが殺される連続ナイフ殺人事件が起き、
日高は知り合った刑事の依頼で「探偵」となる。
やがて彼は、かつて誘拐犯から命を救った
15歳の少年・真人が犯人ではないかと疑い始める。
「人の心の泣き声が聞こえる」という真人は、
「不幸な人は死んでしまえば、もう不幸は感じずにすむ」と言う。
自分が救った子供が殺人鬼になったのか――
日高は悩み、真相を探るうち、真人の心の深い闇にたどり着く。
――――― 帯より
個人的評価 : ★★★★☆
「人の心の泣き声が聞こえる」ってしんどいだろうな。
実際にそんな超能力なり特殊能力なりがあるかどうかはさておいて、
「聞こえる」と思っている真人にとっては。
喜びや感動やプラスの感情ではなく、
「泣き声」だけがいつも聞こえると言うのは。
誘拐されて殺されかけて、まだ。
具体的に色々書くとネタバレになりかねないと思うので難しいけど、
「真人の心の深い闇」を生んだ幾つもの(絡み合った)要因のうち、
理解も共感も同情もできないのは
最初の誘拐犯のしたことくらいなものだから……。
不幸の最中で死ぬこと、について
「不幸なまま死ぬなんてあんまりだ」という日高の言い分も
「死ねば不幸だと感じることもなくなる」という真人の言い分も
どちらも尤もに思えてしまう。
「文句なし!」というわけでもない。
子どもと妻を亡くし、そうまでしていた仕事の意味を見失い、
人との繋がりも仕事も自らの名前すらも捨てて
アルコールに溺れていた「男」と
積極的に事件に関わろうとする「日高」のギャップとか。
事件の内容や捜査状況をあまりに簡単にペラペラ喋る刑事たちとか。
そういうものに引っかかったりもしたんだけど、
それも「かつての誘拐事件」というのがあるからこそ、
ということでまぁいいか、と思えなくもないか。
とにかく引き込まれてあっという間に読んだ。