- 線/古処 誠二
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この一線、越えるのか、踏みとどまるか――。
過酷な自然、のしかかる重い疲労。
死線をさまよい続ける極限状態にあって、
人間が人間らしくあることは可能なのか、
第二次世界大戦時のニューギニアで、
前線と後方をつなぐ兵站線から、
名も無き兵隊たちのドラマを描く、小説の極致。
――――― 帯より
個人的評価 : ★★★★☆
描かれているものは先に読んだ他の古処作品と同じ。
戦争、日本から遠く離れた過酷な地で戦う兵たち、
そんな兵たちを苦しめる飢え、マラリア……。
「線」の重さと脆さ。
超えるか、踏みとどまるか。
その線のこちら側とあちら側には
とんでもなく大きな隔たりがある気がするけれど、
そんな隔たりがなくなる(見ない振りでもするしかない)
現実がそこにあるということか。
『豚の顔を見た日』や『銃後からの手紙』が印象的だったか。
相手がどんな人間か、と言うことについて
知らないから、考えないから闘える(殺せる)
という部分もあるんじゃないかな……。
「鬼」だの「豚」だのという呼び方にしても。
敵であるその相手にも自分と同じように
無事を祈る家族がいるということを思い知らされて、
涙を溜めた顔なんかを目の当たりにしてしまったら、
一人の人間として認識してしまったら。
と思うのも、平和な暮らしを送っているからこその考え方なんだろうか。
それまでの殺し合いで麻痺した感覚は
それくらいのことでは戻らないところまで行ってしまっていたんだろうか。