- 悪党たちは千里を走る/貫井 徳郎
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「お前がそんな極悪人とは知らなかったぞ。
言うに事欠いて、誘拐だと?
いたいけな子供をさらって親を脅迫しようって言うのか。
そりゃお前、世の中で一番卑劣な犯罪じゃないか」
――― 本文より
真面目に生きることが嫌になった3人が企てる、
「人道的かつ絶対安全な」誘拐―――?
『慟哭』の著者がユーモアとスピードたっぷりにおくる、
誘拐ミステリの新境地!
――――― 帯より
個人的評価 : ★★★★☆
5つ寄りの4つ。
結構好き。
分厚いわりにそんなに時間も掛からず読めた。
貫井さんの長編というと、
重い・暗い・辛いという印象の方が強かったんだけど
これは随分楽に読める長編だと思う。
「人道的かつ絶対安全な」誘拐の手口、
特に身代金の受取り方は予想外で面白かった。
今回の作品の中で、読んでてイヤな気分になるのは
誘拐事件(本物)の黒幕である<ジョン>づらいじゃなかろうか。
3人のキャラクターも、
詐欺師ということで完全な善人ではないんだけど、
人並みの正義感はあって、どこか憎めない感じだし。
狂言誘拐を3人に依頼してきた子どもも
最初は「何て可愛げのない」って思ってたのに、
「小憎らしさもあるけど、なんだやっぱり子どもだな」
なんて思えるようになってくる。
ただ、最後あたり、ちょっと急いだ感じがしなくもない。
誘拐された子どもの両親、
そこに張り込んでいた刑事たちなど、
前半ではどういう人物なのかだとか、色々書かれてたのに、
後半(事件がどんどん動き始めて以降)、
そのままほったらかしにされちゃった感じがしてしまう。
どうせなら完全に3人組対誘拐犯、ってことでも良かったのに。
最後の最後、巧(子ども)からの贈り物の中身、
簡単に想像できちゃって驚きもないし
特別「面白い!」というわけでもないけど
その光景を想像するとほのぼので嫌いじゃない。