- 夜想/貫井 徳郎
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あたしはずっと夜の中にいました。
救われる者と救われない者。
ふたたび<宗教>をテーマに、
魂の絶望と救いを描いた雄渾の巨篇。
欺瞞
女は思う。
世界はいつも自分にだけよそよそしい。
瑞兆
男はある朝、虹を見て思った。
二度と感じることなどないと思っていた喜びという感情が、
今日は自分の身に訪れるのではないか、と。
神か。
神などいるはずがない。
――――― 帯より
個人的評価 : ★★★★☆
書かれてるテーマはなかなか面白かった。
驚きもあったし。
でも満点出すにはちょっとためらう点もあって星は4つで。
前半の展開が多少ゆっくり過ぎた気がしたのと、
最後に“男”の抱えてた真実が明らかになるあたりが
説明臭い気がしちゃったのがちょっと残念。
その真実もわりとありがちだし。
狂気の女の予想外の行動や彼女の抱えてた秘密や
特殊な能力を持つ女が講演で語ることなんかは面白かった。
<宗教>をテーマに、とあるんだけど
読んでる最中はあまり<宗教>を意識することはなかった。
言葉としては「宗教」という単語はよく出てくるし、
人間関係なんかは確かにだんだん宗教めいてはいくし、
「救い」とか「神格」とかいう要素も大いに絡んでくるんだけど、
<宗教>という大きい話より一人の人間の精神の話という印象で。
救われる者と救われない者だけじゃなくて
救われる者と救う者の話でもあるような。
「救い」とは何ぞや、ってことにもなるけど。
名作「慟哭」から十四年。