理趣経 6
八十九です
前回のお話はこちら
理趣経シリーズ第六弾です。
さてさて前回は、
”民”たちは奈良仏教で
解脱ができるのか？
「否」それは無理だから
”大仏”に救済して
もらいましょう、という
建付けの教えになりますよね！
しかも「華厳経」は劇薬なんです。
えらいこっちゃ！！で終わりました。
そのうえ、劇薬の華厳経においては
釈迦を教主とはせず、
人としてこの世に存在したことのない
毘盧遮那仏を教主としています。
ですがここで・・・問題が一つ。
たしかに華厳経は大乗仏教の世界観や
体系を示しましたが、宗教にとって
必須の”行”を説かなかったのです。
”行”を説かない華厳経は宗教といえる
のか？これは難しい問ですし、誰も答え
られない性質のものでしょう。
ただし、多分に哲学的な華厳経の
世界観は、その哲学的純粋さでもって
奈良六宗の中の”大乗の光”として
屹立し、静かに大日経と
大日如来の出現を待っていたと
解釈するべきなのでしょう。
なぜなら観念の存在である毘盧遮那仏は、
その観念が空海によって密教化し、
大日如来となったのですから。
どうして毘盧遮那仏と
大日如来が同一視されるように
なったのか、
その理由なんですが...
私という宗教の素人からすれば
実に奇怪な風景です。
空海は帰朝してしばらくすると、
東大寺の別当（長官）を任されます。
密教という、どちらかと言えば
生々しい教えを持ち帰った空海が、
華厳宗（東大寺）という
哲学的で清々しい学問宗派の本山に
入るのですから、いやはや実に奇怪、
それ以上に奇想天外です。
とはいうものの、その別当空海によって
一部密教化した東大寺はいまでも毎朝、
「理趣経」をあげる宗派になった。
あれあれ・・・？
理趣経でもめた天台（最澄）とは
結果が正反対ですよね。
東大寺では毎日、理趣経を大仏様
（毘盧遮那仏）の前でよんでいます。
ですから真言密教だけではなく、華厳に
とっても大切な御経であることは
容易に想像ができます。
それゆえに、理趣経の解釈本を貸して
貰えなかった最澄の側から見れば
えらい理不尽に映るかもしれません。
んー、
では、そろそろ理趣経の具体的な内容を
迫ってみましょう。理趣経の冒頭の部分
です。いかがでしょうか？
『十七清浄句』
１妙適淸淨の句、是菩薩位なり
（性交によって恍惚に入ることは清浄）
２慾箭淸淨の句、是菩薩位なり
（男女間に起こる欲望は清浄）
３觸淸淨の句、是菩薩位なり
（男女が触れ合うことは清浄）
４愛縛淸淨の句、是菩薩位なり
（男女が離れがたいのは清浄）
５一切自在主淸淨の句、是菩薩位なり
（男女が合体して全てを征服した
気分に浸るのは清浄）
６見淸淨の句、是菩薩位なり
（男女の欲望を見たいと思う心は清浄）
（性行為で快楽を得ることは清浄）
８愛淸淨の句、是菩薩位なり
（相手を束縛したい心は清浄）
９慢淸淨の句、是菩薩位なり
（一切が満たされた満足は清浄）
10莊嚴淸淨の句、是菩薩位なり
（欲で飾り立てる事は清浄）
11意滋澤淸淨の句、是菩薩位なり
（異性に触れる喜びは清浄）
12光明淸淨の句、是菩薩位なり
（愛情の光明は清浄）
13身樂淸淨の句、是菩薩位なり
（一年を通して良い体調は清浄）
14色淸淨の句、是菩薩位なり
（見た目を見る心は清浄）
15聲淸淨の句、是菩薩位なり
（声を聞く心は清浄）
16香淸淨の句、是菩薩位なり
（香りを味わうことは清浄）
17味淸淨の句、是菩薩位なり
（味わうことは清浄）
理趣経、実にきわどいですね。
このきわどい理趣経がなぜ天台には
移植されずに、華厳ならＯＫだった
のでしょうか？
これまた実に難儀な問題ですよね。
つづく
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