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「起きて。・・・起きなよ。」


苛ついたような声に目を覚ました。


「・・・えーっと・・・?」


「もしかしてさ、忘れちゃってるの?」


意味深な笑顔に眠る前の記憶が鮮明に蘇る。


「忘れてなんかありませんっ!!」


むしろ忘れたいぐらいだ、と心の中で付け加える。


廊下を歩きながら昨日あったことを


ぼんやりと思い出していた。


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「ですから!私は道に迷って―」


「嘘つくんじゃねぇ。何回言わせ・・・」


「どうしたんだ、土方さん?」


「あぁ、いや、何でもねえ。本当に迷ったんだな?」


「そうです。それでここに辿り着いて、


 相談しようと中に入って・・・」


「そうしたら、あいつら三人が作った馬鹿でかい


 穴に落ちたって訳だな?」


肯定の意で首を振る私を見て、


土方と呼ばれた人は昨夜私を助けてくれた


三人を横目で睨んだ。三人は一瞬怯んだが、


すぐに大きく反抗した。


「ただ悪戯で作ってたわけじゃねえよ!」


「そうそう!侵入してくる奴を捕まえようと!」


「俺達なりにここの事を思ってだな・・・」


「結果訪問者が落ちてんじゃねえか。」


土方の正論に三人の言葉が詰まる。


やがて、


「平助、もう諦めて入り口の片付けしてこようぜ。」


「そ、そうだな!新八っつぁん!後任せた!」


「おいっ!逃げる気かよ!」


そう言って取っ組み合いになる三人を無視し、


咳払いをする土方。


「で、その逸れたって言う連れの特徴は?」


「はい。父は、雪村綱道という蘭方医で・・・」


ざっ、と場の空気が変わった。


廊下で取っ組み合う三人も、


壁際に座っていた沖田、斉藤も、


上座に居る偉い人達も、


一瞬時が止まったようだった。


緊張の糸を切ったのは、


沖田の拍子抜けしたような一言だった。


「あれ?でも綱道さんって、今日来るはずじゃなかった?」


「そうなんですか?!でも今日は仕事だって・・・」


「だから、綱道さんの仕事場がここなんだって!」


「じゃあ待ってれば来るって事ですか?」


私は救われた気分になったが、


「でもさぁ、ここに来るかは分からないよね。」


「どういうことですか・・・?」


「今頃あんたを探し回って、長旅になりかけている


 かも知れないということだ。」


「ま、そう長くはならないと思うけど・・・」


「そんな・・・」


父様のことだから、心配は無いと思うけれど、


出来るだけ早くここから出たかったのに。


そう思っていると上座の中央に居る


一番位の高そうな人が口を開いた。


「ならば、綱道さんが見つかるまで、ここに住むといい。」


するとその奥に居る眼鏡をかけた人が加勢する。


「隊士として扱うのもまた問題ですし、


 彼女の処遇は少し考えなければなりませんね。」


「誰かの小姓にすりゃいいだろ?」


「じゃ、俺ので決定だな。」


「いやいや左之さんなんかの小姓にしたらどうなるか


 目に見えてんじゃん!俺にしときなって!」


「平助こそなんかしでかさねぇ自信でもあんのか?」


「新八さんは論外だよね。」


「あぁ。やめたほうがいい。」


「総司に斉藤!そりゃどういう意味だ?!」


なんだか私抜きでどんどん話が進んでいっているような。


「まあまあ落ち着け。ここは、本人の意見を尊重と


 いこうじゃないか。どうする、雪村君?」


ここで私に振るなんて、ひどいですよ・・・


みんなの視線に耐え切れなくなって、


雑用係でも何でもいいから、争わないでくれと


懇願した。


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